AKB48に、ようやく新エースが誕生しようとしています。
3月のシングルのセンターに、AKB48岡田奈々(20)が初指名されました。
2012年に第14期生として加入。既にアイドル歴6年なので、初々しいわけではないのですが、不思議と今も「鮮度」は衰えておらず、フレッシュさにあふれています。
1年半前に、髪をばっさり切ってショートヘアにしたことで、ルックスがまったく別人のようになりました。その辺が「使い古された感」がしない一因かと思います。
もともと、デビュー直後から「三銃士」と呼ばれる期待の若手トリオとして活動していました。ただ、当然その3人の中にも序列が生まれます。
岡田は、そこでは2、3番手で、エースではありませんでした。普通のメンバーよりは、はるかにエリートでしたが、同期には常に先頭を走るメンバーがいました。同い年にはHKT48宮脇咲良やNMB48白間美瑠など、姉妹グループで、早々にエース、センターになっていくメンバーがいました。
さらに16年春には、岡田の1期後輩の向井地美音が、先にAKB48のセンターに大抜てきされました。
1年ほど前までは、完全に“出世争い”では、後塵(こうじん)を拝した形でした。そこそこの活躍は予測できても、当時の状況からAKB48のセンターを任されるまでにジャンプアップすると予想した人は、それほど多くなかったと思います。
少し話は変わりますが、AKB48グループには、独特の習性があります。
出世街道を歩めず、日々の活動が地味なメンバーは、隠語で「干され」と呼ばれます。ただ、実は干されメンバーには、意外な大逆転の芽があります。一部の熱狂的なファンが、「チャンスに恵まれないならば、俺たちがビッグにさせる」と燃えて、AKB48選抜総選挙で上位にランクインされて、一躍シンデレラガールになるという例です。
代表格では、SKE48須田亜香里、松村香織、柴田阿弥ら。昨年8位の惣田紗莉渚は、第1回ドラフト会議の5巡目指名です。まさしく、最下層からの天下取り。これが起こり得るのがAKB48グループなのです。
一方、才能の優劣がはっきりしない若手時代から、チャンスを数多くもらうメンバーを「推され」と呼びます。この推されメンバーは、早くから知名度を上げられる半面、ファンからの熱い支持を得られにくいところがあります。ファンからすると「私たちのサポート必要性がない」と、映るのです。
常にエースとして英才教育を施され、外野に何を言われようともエースとして扱われ続ければ、「地位が人を育てる」のパターンで、立派に成功することは、もちろんあります。
ですが、こんな独特な世界観のAKB48グループの中では、岡田のような「万年2、3番手」というメンバーは、どこか悩ましい立ち位置だったりするのです。
常に自分より優遇されているメンバーが、前にいます。かといって、立場を逆転するほどの起爆剤(ファンの強烈な後押し)を手にするほどに、不遇な扱いを受けているわけでもない…。デビューからしばらくの岡田の心境をおもんぱかると、何をどうすれば現状を打開できるのか、一番難しい立ち位置だったかと思います。
マジメな岡田は、活動の2本柱である劇場公演と握手会を愚直に頑張り続けましたが、16年の総選挙前に「機能性低血糖症」で休養に追い込まれました。精神的に限界だったのだと思います。
それでも、直後の総選挙で14位に入り、涙ながらに休養理由を明かすスピーチして、髪を切ったところから、活路が開けていきました。
昨年に入ると、アイドル活動への真摯(しんし)さを買われ、新しく発足したSTU48のキャプテンに指名され、総選挙も9位にランクアップ。須藤凜々花の結婚宣言直後の名スピーチで、今後のAKB48を背負うべき器と証明しました。
岡田 今のAKBグループはスキャンダルをネタにしたりして、そこから這い上がるメンバーがよく見られます。みんなが一緒じゃ絶対つまらないし、そういう人がいてもいいと思ったんですけど、それをまねしていいとは絶対思わないし、自分はマジメにやっていてもいつか必ずAKB48のてっぺんをとれると思っています。真っすぐに頑張っている人が報われるように、グループを変えていきたいです。
昨年の大みそかに卒業した渡辺麻友が、涙して聞き入ったこのスピーチが決定的でした。
正統派アイドル渡辺麻友に憧れてAKB48に入った岡田が今、ポスト渡辺麻友として、新たなAKB48の顔になろうとしています。
日刊スポーツ
powered by Auto Youtube Summarize