出典:EPGの番組情報
インタビュー ここから「漫画家 ちばてつや」[字]
『あしたのジョー』で知られる漫画家のちばてつやさん。個性豊かな登場人物たちを見守るちばさんのまなざし。その原点にインタビューで迫ります。きき手は井上二郎アナ。
詳細情報
番組内容
漫画界のレジェンド・ちばてつやさんがゲスト。『あしたのジョー』で知られるちばさん。『あした天気になあれ』『のたり松太郎』など、個性豊かな登場人物が活躍するヒット作を次々と生み出したちばさんが人間くさい登場人物を描く思いとは。そして、満州から引き揚げてきた経験がちばさんの作品にどう影響しているのか。自らをまだ発展途上と語るちばさんが人間をどう見つめているのか。その哲学に迫る。きき手は井上二郎アナ。
出演者
【ゲスト】漫画家…ちばてつや,【きき手】井上二郎ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
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- ジョー
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- 主人公
- 日記
- 部分
- 暴動
- 漫画家
- キャラクター
- ピカッ
解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
引き続きご覧ください。
ヒット作を 多く生み出し
82歳になった 今なお 描き続ける…
ちばさんぐらいの巨匠になると
次々 アイデアが
ここで湧き出してくるっていう…。
あ~ いやいや…
もう だいぶ枯れてきてるんで。
もう ほんとに…
描いてるうちに コツを覚えて…
代表作「あしたのジョー」。
主人公のジョーだけでなく
ジョーの周りの人物たちも
それぞれ人生が 浮かび上がってきます。
その原点を たどります。
いや 実は 私
「あしたのジョー2」という映画が
生まれて初めて見た映画なんですよ。
えっ 生まれて初めて?
生まれて初めて。
これだけ時代が変わって
また人々の気質が変わっても
なお これだけ愛される。
これ ちばさんは
どういうふうに思われますか?
私も びっくりですけど すごく…
時代を超えて 例えば
お父さんと息子とか もしかしたら…
それは ほんとに うれしかったですね。
1968年に発表した「あしたのジョー」。
主人公は ドヤ街に流れ着いた
矢吹 丈です。
ズルも 悪さもした ジョーですが
丹下段平に 才能を見込まれ
ボクシングと出会います。
地域の人たちにも愛され
プロボクサーとして歩み始める ジョー。
ライバル 力石の死を乗り越えて
ジョーは
世界チャンピオンへ挑んでいくのです。
でも ジョーって 正統派の
ヒーローではないじゃないですか。
そうですね。 ちょっと枠から外れて…
現実の世界に
ジョーみたいな人間がいると
ジョーって けんかっ早いし
あるいは わがままだったりとか
ちょっと これ つきあいきれないかな
なんて 思っちゃうんですけれども
でも やっぱり 何だか
ジョーの夢を応援したくなるような
魅力があるんですよね。
だけど みんな それは
それぞれ育ってきた環境が違ったり
個性とかね みんな違いますから
そういう人の気持ちになりながら
ジョーは これで 今 ジョーは
すごく 今 怒ってるんだろうなとかね
顔は 笑ってるけど
こいつ怒ってるなとかって
そういうことを考えながら描いてたんで
それぞれのキャラクターの日記を
つけているような感じですね。
キャラクターの日記?
うん。
明日 どうなるか分からないんですけど
今日…
こいつは どうして
こんなに頑張れるんだろうと思って
よく分からないけど だけど こういう
生き方するやつも いるなとかって…
ちゃんと目的があるのに 夜 抜け出して
うどん食べちゃったりなんかするような。
マンモス西。
こちらが その マンモス西。
減量に耐え切れず
うどんを食べてしまう弱さを見せます。
しかし ちばさんは その後の西を
ボクシングとは違う世界の成功者として
描いています。
そうやって ちょっと
挫折する人間もいるんですけど
それも また一人の人間の個性というか
弱さ強さね いろいろなところがあって
それが人間らしい世界なんで
「私も うどん食っちゃうな」とかって
思いながら描きましたね。
人間のそういう弱い部分も ひっくるめて
いいんだということなんですか?
そうですね それが人間だなって。
西は 要するに ボクシングの世界ではね
ほんとに
入り口のところで もう つまずいたり
そんなに大した成績も残せないで
だけど 彼は彼なりに
もともとね 太る体質なんで
随分 減量や ボクシングの世界で
生きるのは つらかったと思いますけど…
ボクシングでは
ジョーや 何かに比べると
ほんとに
いい成績も残せなかったけども
そのあと
結婚したりなんかしたあとにね
ああ こいつは 幸せな人生
送ってるだろうなというふうに
想像してもらえるような生き方を
描けたと思います。
ちばさんの漫画に共通するのは
誰も見捨てないんですね 最後まで。
必ず サポートをする
見守ってくれる人が出てくる。
これは 何かこう ちば作品に
通底するような感じがするんですよね。
そうですか。 それは あんまり意識して
やってることではないんですけど
無意識のうちに 自分が こう
やっぱり気になるんでしょうね。
こいつ どうなるのかなっていうことを
気になるんで…
何かしてるのかもしれません。
ちばさんは 1939年 東京で生まれました。
家族は 幼い頃 旧満州の奉天
今の中国 瀋陽に移り住みました。
そこで迎えた 昭和20年8月。
戦争が終わると 奉天の町では
暴動が起こったと言います。
ちばさんは 当時6歳。
両親や 3人の弟たちとの
逃避行が始まりました。
逃げて どう行ったらいいのか
分からないで
もう あてのない旅です。
ほんとに
一緒に歩いてる人が やっぱり…
お年寄り それから 病気を持ってる人
ケガをしてる人から
その行列に ついていけないですよね。
だけど その人たちを担いで
というわけには いかないんですよね。
だから そういう人たちは
「気をつけてね」とか言って
お別れするしかないんですけど…
大体 倒れてるのは 日本人ですよね
その当時はね。
そういう人たちを こうやって ゆすって
「大丈夫 大丈夫?
立てないの?」とかって言いながら…
でも 返事もしない
皮膚も冷たいとかってなると…
う~ん あの まず靴をね
みんな歩いてて もうぼろぼろですから
靴底が すり切れて
指が出てるような状態だから…
着てるものを
もう その方は もう仏さんですから
「ごめんね」って 手を合わせながら…
今 思い出すと ちょっと ぞっとします。
怖い… 怖いですね。
そういうのは 何て言うんですか?
ちばさんの死生観というか
「死ぬ」っていうことに対しては どういう
思いを抱かせるようになったんですか?
これは 今でも 私は変わらないんで
自分で自分を ちょっと戒めるんですけど。
人間って わりと簡単に
死んでしまうんだなっていう現場を
たくさん見てるんでね…
今は 一緒に遊んでたのに
ふっと こう気が付いたら
もう息はしてないとかね
そういうものを見てたから…
ただ その反面…
…っていうことも感じたのは
同じ時期ですね。
だから 両方 ない交ぜになって
だから
人間って強いなあっていうところと
人間って弱いな すぐ死んじゃうん
だなとかっていうところと
いろいろ 複雑に 私の頭の中で
記憶が こう まざってるんで。
逃避行の中で
手を差し伸べてくれた人もいました。
父親の知り合いの中国人
徐集川さんです。
自分自身に 危険が及ぶ可能性もある中
徐さんは ちばさん家族を
屋根裏部屋に
かくまってくれたのです。
引き揚げてくる途中で
もう随分 ひどい暴動も受けましたけど
中にはね そうやって…
食べ物だとか 宿を提供してくれたり
そういう中国人たちも
たくさん いましたよね。
それから もう ただただ
暴動で怖かった人もいるし
だけど よく顔を見て
こうやって話しすると すごく優しくて
いいお兄さんだったり おじさんだったり
おばさんだったりするんで。
17歳で 漫画家として
デビューした ちばさん。
雑誌での連載を抱え 漫画家としての
地位を確かなものにしていました。
そのころ 日本は 戦後復興を遂げ
高度経済成長に沸き上がっていました。
しかし ちばさんは
違和感を覚えることがあったといいます。
すごく浮かれてね
楽しい楽しいっていう時代でしたから。
だから そうじゃなくて…
その子どもたちに向けて
戦闘機乗りとか 戦闘員が
いかに かっこよかったかっていう漫画が
たくさん出始めたんですね。
戦記漫画ブーム
いろいろな特集がありましたよ。
戦艦大和だとか いろんな武蔵だとか
漫画にも そういうものが
たくさん出てきたんで
あれ~ 戦争って
すごくかっこいいとか メカニックで
こういうのに乗ってみたいとかっていう
子どもが憧れて…
そんな思いから生まれた「紫電改のタカ」
主人公は
戦闘機のパイロット 滝 城太郎。
太平洋戦争中 死と隣り合わせの
戦闘が続く 若者たちを描きました。
物語の最後に 滝は 戦争が終わったら
教師になりたいと 思いを語ります。
しかし 特攻を命じられるのです。
少し やっぱり 漫画だから面白い部分も
入れなくちゃいけないと思ったんで
いろんな 何とか戦法とか 逆タカ戦法とか
いろいろ織り交ぜながら
「だけど 戦争はね」っていう
何か こう描きながらね
その辺 非常に難しかった作品なんですよ。
子どもが 「暗くて こんな重い話なんか
読みたくないよ」と言われたら嫌なんで
何とか みんなが
「次 次は どうなるの?」っていうふうに
読んでほしいなと思うから ちょっと
期待を持たせたりなんかするんで
そうすると ちょっと…
ちばさんは 「あしたのジョー」でも
自らの戦争体験と 向き合っていました。
ジョーと対戦した 韓国人
金竜飛の子ども時代。
朝鮮戦争の混乱の中
食料を得ようとして
殺してしまった兵士が
自分の父親だったという このシーン。
ちばさんは
満州で見た光景を重ねていました。
記憶の うんと底に沈めて
蓋しちゃってるんですよ。
私も ず~っと そうでした。
母親… 親に聞いても
母親は 「そういう話 もうやめ やめて
もう思い出させないで」って言うんで
あんまり聞くこともなかったし。
だから できるだけ明るくて
元気で活発な男の子を描いて…
だんだん だんだん ちょっとね
「あしたのジョー」を描いたりなんかして…
蓋をしていたはずなのに
いつの間にか…
それを描いてる時は
気が付かなかったんだけど
そういうことは 何度か気が付きました。
無意識のうちに
私が引き揚げてくる途中の
それこそ 轍に水たまりがあったり
いろんなトラックが
半分 土に埋もれてたりなんか
そういうような場面を 記憶の中から
思い出して描いてたんですね。
でも ずっと その蓋をしていた部分を
開けるっていう作業っていうのは
つらいことじゃなかったですか?
だけど あ~ これは…
もしかしたらね 今 テレビの画面だとか
ネットで見たりなんかすると
何か ゲーム感覚でね 真っ暗い中で
ボ~ッと 何か飛んでいって
ピカッと光ったりして
ボ~ッと 飛んでって
ピカッと 光ってるところに
いろんな人がいるんだよっていうことは
分かってほしいなということを思って
もう蓋したままじゃいけない…
私は 漫画 絵を描いたり何かして
表現する人間ですから…
何か そういうことも感じるように
なってきたんですね だんだん。
現在 連載している
「ひねもすのたり日記」にも
ちばさんの体験が 描かれています。
過酷な状況下で 翻弄された人たち。
そこで 目の当たりにした
人間の強さや弱さを
ちばさんならではの目線で
浮かび上がらせています。
そのストーリー お話の中で 短いお話
長いお話 いろいろありますけど
その中で 自分が
何か伝えたいことがあるんですよね。
人間って すごく頑張れるよ。
もう 土壇場になっても
こんなに頑張れるんだよ 人間って。
人間って強いよっていう
メッセージを送りたい時に
一生懸命 そういう話を作るんですけど
やっぱり その時に…
ちばさんが考える本質って
どういうものなんですか? 本質。
こういうことが
大変なんだっていうことだったら
何とか 例えば みんながね
災害が起きたりなんかすると…
「けっぱれよ~」とか…
そういうようなことをするのが…
本質っていうことは つながる力
つながり合う力っていうことですか?
助け合う力とかね。
みんな それは持ってるんですけど
それが ちょっと こう
自分が いじめを受けたり
つらい目に遭ったりすると
ゆがんでしまって
人を… その人を憎んだり
ねたんだりなんかしてしまいますけど
それは それで 人間なんだから
しょうがないんですけど
本質 ほんとに人間っていうのは
お互いに 相手のことを思って…
時々 私は感じるんで
そういうことを…
まあ 偉そうですけど。
言語手段を持ってるのと一緒なんで…
私は ほんとに いろんなことができない
ダメ人間だったのに…
私から漫画を取ったら 何も
ただの干からびた じいさんに
なっちゃうんですけど
漫画を描くことによって
自分の気持ちとか
人に もしかしたら
元気を与えることもできたり
人間って何だろうって
考えてもらうような きっかけ
あるいは 戦争って
どういうことなんだっていうことも
気が付いてもらうようなことも
できるように だんだんなってきた。
もっともっと そういう表現をする力を
磨きたいと思うし
それから 絵を描く 絵を描きたい
漫画家になりたいとかっていう
若者たち 学生たちに
漫画って こんな力も
持ってるんだよってことも
伝えていけたらいいなあというふうに
私は思っています。
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