100分de名著 安部公房“砂の女”(2)「揺らぐアイデンティティー」[解][字]…の番組内容解析まとめ

出典:EPGの番組情報

100分de名著 安部公房“砂の女”(2)「揺らぐアイデンティティー」[解][字]

女の家で一夜を過ごした仁木順平は翌朝外界へ出るための縄ばしごが取り外されているのを発見し驚愕。自分が恐るべき状況に陥ったことに気づく。それはまさにアリ地獄だった

番組内容
仁木は村人たちによって砂を掻き出す作業員として幽閉されてしまった。彼は女を問いただすが超然として相手にしない。女の態度に苛立ちつつ、仁木は脱出や抵抗を試みるが、ことごとく挫折。あげくに自分が忌避していたはずの戸籍や所属証明を楯に女や村人たちを恫喝(どうかつ)するのだった。第2回は、主人公の「アイデンティティーの揺らぎ」を読み解き、自由へのあくなき拘泥が逆に人間を束縛するという逆説について考える。
出演者
【講師】漫画家…ヤマザキマリ,【司会】伊集院光,安部みちこ,【朗読】町田啓太,【語り】小口貴子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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キーワード出現数ベスト20

  1. 自分
  2. 会話
  3. 恐怖
  4. 象徴
  5. 人間
  6. 生徒
  7. 同僚
  8. 面白
  9. 理屈
  10. ウケ
  11. スタッフゥ
  12. バラバラ
  13. メビウス
  14. ヤマザキ
  15. 安部公房
  16. 管理社会
  17. 気付
  18. 作戦
  19. 実直
  20. 社会

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

アリ地獄に はまった 哀れな虫のように

砂の穴に とじこめられた男。

不条理な状況にあらがう中で

男のアイデンティティーが
無自覚に揺らぎ始めます。

「100分de名著」
「砂の女」。

何かに帰属しなければ 生きていけない
人間の本質に迫ります。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

「100分de名著」
司会の安部みちこです。
伊集院 光です。

今月の名著は
安部公房の「砂の女」です。

伊集院さん 前回 いかがでしたか?

いろんな こう想像をして
頭が回転しすぎて

収録 終わってから
ちょっとクラクラしました。

いや めちゃめちゃ面白いですね はい。
ああ~ 楽しみですね。

指南役 ご紹介します。

漫画家で文筆家の ヤマザキマリさんです。

よろしくお願いします。
お願いします。

さあ 第1回では 男は 砂まみれに
なったところまで行きましたけども。

そうですね。
ヤマザキさん このあとは
どうなっていくんでしょうか?

男の抱いていた…

彼にとって 砂っていうのは
ある種の自由の象徴だったわけですけど

そういったものでは ないんじゃないか
という

不穏な空気が
どんどん広がっていって。

まさに…

だって 自分が信用していた
その自由の象徴が

どうも そうじゃないっていう雰囲気を
表してる女の人と一緒に

面と向かうことによってね
彼の その…

何で 自分たちって 生まれてきたら
やたらと その生きてきた証をとか

生きてきたことに対しての特別感に
こだわんなきゃいけないのかとか

そういった実直なことを
安部公房は

どんどんどんどん
突きつけてくるわけですよね。

これから どんどん それが
容赦ない状態になっていきます。

さあ 前回 男は砂の中にある あばら家で
一夜を過ごしました。

翌日 彼が目を覚ましたところから
見ていきましょう。

砂まみれで起きた男は
土間にあった水甕に向かいました。

囲炉裏の向こうで寝息を立てる女に気付き
息をのみます。

女は 素っ裸だったのです。

男は 女に近づくことはなく

砂でざらつく唾を吐き出し
水で口をすすいで 顔を洗います。

素早く 身支度を整えると

寝ている女を起こさないように
足音をしのばせて 外に出ました。

男は 比較的 傾斜が緩やかに見える
壁を選んで 登り始めます。

しかし 砂は流れ落ち
焼けた砂が手を焦がし

足は 膝までめり込んで 進めません。

家に戻って 女に向かって叫びます。

しかし 裸の女は くるりと背を向け

黙って
首を左右に振り続けるばかりでした。

男は ここで気付くのです。

いちいち面白いな。 すごいな。

なぜか 女が素っ裸だったって。
はいはいはい。

びっくりしますけど ヤマザキさん

あれは
どう捉えたらいい表現なんですか?

一般的な読み方をすると

そこで ある種のエロティシズム
ということを喚起されてね

あら 何で ここで こんな急に みたいな。

でもね 女にしてみりゃ そんなの
もう どうでもいい話なんですよ。

…という解釈に ひもづいてると思う。

男は この女の生態を見て

これは
全く共通概念のない 別な生き物

要するに昆虫とか

プリミティブな生き物みたいな扱いに
なっていくわけですよね。

すごい ある種の恐ろしさというか。

分かります。 何か
いきなり 恐怖のスイッチが入ったのは

なんだか 普通 隠すところを隠さないで
顔を隠してる感じとか 平気な感じとか

裸の感じとか いよいよ その理解を
超えてきてるじゃないですか。 そう。

だから 要するに 女にとっては

男と女がいれば 繁殖行動をするための
そういう存在でしかないと。

裸で寝てて 顔を隠すということも…

ああ~。
でも でも
本能的なエロは感じてますよね。

だって 唾を…。
唾が わきましたよね。

わきました。 だから それは
本能が反応しちゃったんですよね。

うわ~
何かが崩れ始めてますね これは。 うん。

だって 本当だったら…

素っ裸の女を見て
まあ 生殖器を見て 欲情するとかね

そんなことは 社会の生活では
許されないわけじゃないですか。

ところが 砂の穴の中だったら
もう実直に それをさらけ出しちゃって。

…って話になる。

とりあえず逃げることが まず先決だと
その時は まあ思うわけですよね。

生命の恐怖。 抱いたら おしまい感とか。
そうです。

抱いたら だって認めて
その女の生き方の方を…

砂と ただ向き合って 生きていくという
この生態を

俺は受け入れてしまうことに
なるわけですよね。

理屈が全てだと思って 生きてきて。

でいて あくまで…

もちろん理屈です。
とってつけたような。

理屈なんていうものが 全く

生存していくうえでは
必要のない女を目の当たりにして

全てが やっぱり…

女っていうのは。

何か すごく思うんですよね。
お笑いの理屈を すごい勉強してた時に

いわゆる 天然と言われてる
その寸法に合わないけど

めちゃめちゃウケてる人が出た時の
恐怖とか。 そう。

狩野英孝くんが売れてきた時に

「スタッフゥ~ スタッフゥ~」っていう
ギャグが はやったんですよ。

狩野英孝くんが それに関して 「いや 何で
スタッフゥ~って言うと ウケるのか

あんま よく分かんないけど ウケるから
より誇張して続けてる」って言ったのね。

俺 もう それが怖くて。
それを認めたら 何かが俺 壊れちゃう。

おかしい…。
今まで学んできたから 俺は。

修業した お笑いだから。
ああ~。

でも 何かね 彼を越えられないという
恐怖も すごくある。

そうなの そうなの。
ありえないと思いますよね。

その感じに 今。 ええ。
そういうことです。

で 男は結局 優先したのは 口をゆすいで
逃げようと出ていきましたよね。

そしたら はしごはなかったと。

とじこめられたんですけど

でも それを訴えたところで
女の人は ああやって背を向けて

聞こえてるんだけど

多分 起きてきた瞬間から
気付いてたと思うんですけどね

女は 男が起きてきた瞬間から。
ああ~ ずっと。

どういうリアクションとるかなぁと
思ってたら あ 逃げる方向に行ったかと。

何かね 全部 彼女の心理もまた
透けて見えるような気がするんだけども。

いや そうなってくると 顔に手拭い
かかってること 気持ち悪いですね。

だからね 全部 分かっててやってるような
気がしないでもないよね。

男は女を問い詰めると 女は…。

…と答えます。

男は恫喝します。

今度は 説得を始めます。

しかし 女は いたわるように ぽつりと…。

…と言います。

男は 出来上がった芋と大根の煮物と
あぶった干し魚を食べます。

男のあとに食事をする女の姿を見て
男は哀れみます。

しかし そんな気持ちは すぐに消え

今度は スコップで
砂の壁を 下から掘り崩し始めます。

すると…。

男は 日射病で
気を失ってしまったのです。

それから5日間 寝たきりで過ごします。

回復した男は
脱出のために 新たな作戦に出るのです。

何か もう
めちゃめちゃ 女の方が有利で

しかも 最初のセリフ…

めちゃめちゃ怖いですよね。
怖いですねぇ。

まあ でも 男は必死ですから
こう叫びましたよね。

まあ ここで だんだん
その危機感が あらわになってきて

自分で コントロールできなく
なってきているというね

表れだと思うんですよね。
パニックですね。

そう。 最初は管理社会を否定して
砂に来てたくせに

急に 管理社会の肩を持つような方向に
行くわけですよ。

彼のアイデンティティーって
これなんですね。 うん。

やっぱり 私たちってね…

この女の人じゃ もう仁木順平は

自分が誰だか
分かんなくなっちゃうわけですよね。

ところが 管理社会であれば
住民登録もしてるし

自分の存在というのを
きちんと認めてくれている。

そういう環境に やっぱり
必然性があったんだということに

ここで急に 何かこう 当たり前のように
そんなこと 昔から ちゃんと

自分は受け入れてたんだと言わんばかりに
こんなことをつぶやくっていうね。

学校とかを離れて
やっと絞り出したやつが

税金 払ってることと
住民登録だっていう。

マイナンバーカードもあるんだけど
みたいな。 そういうこと。

実に しょぼいですよね。
しょぼいですね。

ちょっと やっぱり笑っちゃうし

それだけ パニックなんだということも
よく伝わりますね。 はい。

そのあと 女が言ったセリフが…

怖っ!

すごいですね。
受け止めてないんですよ。

だから ひょうひょうと 男が どんなに
もがきあがこうと関係ないという

そういう姿勢を
保つしかないわけですよね。

だから やっぱ「砂の女」とは もうほんとに
秀逸なタイトルだと思うんですけども

やっぱり このタイトルの中に
含み込まれている 「女」っていうのは

やっぱり ある種のね…

その圧倒的な力ですよね。

で 何が 一番強いかというと…

自分は誰なのかって
何で生まれてきたのかとか

そういう 私たちは
精神性のところで戸惑って

精神を脆弱化させていくじゃないですか。
この女には 全く それがないっていう。

だって まず 食べなきゃっていうところが
言えるわけですからね。

生きなきゃね あとね。 生きなきゃ。
生き延びなきゃ 話にならない。

そのためには そんな知識や教養なんて
必要ないんだっていうね。

でも これは ある意味で ここには
女という形で象徴されていますが

この広い世界には この…

結局…

だったら もう実直に
人間というのは ただ生きたら

この自分のテリトリーを守るために
日々これ働いて

要するに この女の場合は砂を掻いて
そして繁殖して

どんどん この村の そういう分子を
増やしてってもらいたいって。

やっぱり 教養とか その自分の意識をとか
民主主義をとかね

そういうことを あんまり…

さあ とじこめられて
1週間ほど たった頃

男は 砂丘に来る前の
都会にいた時のことを思い出します。

都会で 中学教師をしていた男には

「メビウスの輪」と呼んでいた
唯一 信頼を寄せる同僚がいました。

彼との会話を思い出します。

男は 行き先を あえて同僚たちに
知らせていませんでした。

そのことを後悔した男は もはや
力ずくで脱出するしかないと考え

作戦を実行に移します。

女に 手拭いで猿ぐつわをかませ

両手を後ろ手に縛り上げて
女を人質にとり

砂掻きの労働を放棄させました。

村側が折れるまで
ストライキに突入したのです。

しかし 水の配給が断たれてしまい

男も女も 猛烈な喉の渇きに
苦しめられることになります。

学校のこととか
生徒のことを思い出してますが

何で このタイミングで そのころのことを
思い出したんでしょうか?

思い出すしかないわけですよ。

自分が自分でいられた時のことを
記憶の中に喚起してですね

生徒たちがいて
メビウスの輪のような同僚がいて

そして
自分と対峙して しゃべることが…

分かる。 高校をやめたばっかりの頃って
中学校の時の友達と遊ぶんですよ。

ああ 分かる。

で しかも 中学校の時は
成績悪くなかった みたいなことを

言ってもしょうがないんだけど
それを言い続けることで

何とか 自分を自分でいさせようとする
感じというのは すごい分かりますね。

あの もっと分かりにくかったのが

同僚の メビウスの輪とした
会話なんですけれど…。

学校教育の現場というのは これから

その 日本の社会をつかさどっていく
分子を育てていくところです。

さあ そこで この子たちは…

黙々と余計なことも考えず
一つの 一体化した全体主義の中に

飲み込まれていくのか
または 個人思想を持った…

バラバラに生きているけれども…

毅然と存在してるような
そういうものになるのかということを

当てはめているのじゃないかと思って
私は この会話を読むんですけど。

はぁ~!

砂の その粒子のことについての描写が
出てきますよね。

砂というのは 一つ一つ やっぱり
バラバラなんですよ あれというのは。

アメーバのように融合してないので
全体主義ではないんですよ。

一つ一つの個人で
それぞれ どこに行こうが

何しようが分からない。 見えない。

でも それが ある種の
理想的な民主主義みたいな形で

この人は 砂というものを捉えようと
してたんじゃないかなというのが

この会話の中で見えてきますよね。

うわっ その見方は とても面白いのは…

だけれども その中にある…

理想だけども 実際 砂って
並大抵のことじゃないというのを

今 経験してるから。
そうなんです。 だから 生徒に対して

僕も 生徒は まあ砂のようなものだと
思っていますからという

この一つにとってみてもね…

すごいですね。
すごいです。

面白いことに 安部公房というのは

作品全てを読んでいて気がつくのはですね
彼の やっぱり理想の

ある種の人間の社会組織の
在り方というのがあって

それは どういうものかというと
人それぞれ みんなバラバラで…

それを いつも どこかで
追い求めてるところがあるんです。

でも それを含みつつも
相当 今 困難っぽいんですよね。

そうです そうです。
今の ここまで
俺が聞かされてる状況では。

だってね そんな社会って
実は 本当に簡単にできるものじゃない。

全員が全員 悟りを経た
例えば ブッダみたいなのが

全国民だったとしたら
ありえるかも分かんないけども

そうはいかないですよ。

人間っていうのは 脆弱だし 怠惰だし
やっぱり 何かに すがって

誰かに面倒を見てもらいたいと
思ってるわけですから。

ここまで 自分が本当に信じてきた
ある種の…

だから そこをもう
一生懸命 あらがって

修正可能なことなのか どうなのかという
状況に至ってるわけですよ。

それでも頑張って 知識とか 知恵とか
頭を使って解決しようと思うから

女の人を猿ぐつわして
交渉を試みるじゃないですか。 はい。

でも これは
価値観の違う人との交渉だから

心理戦って できんの? っていう。
そうです。

これは だから 象徴として読めば
ある種の戦争ですよ。
はい。

戦争というのは
やっぱり 自分たちのことを…

そういう行動に出てるんですよ。

暴力的行為に出るしかなくなってきている
という危機感ですよね。

さあ 仁木は 女を縛り上げるという作戦
決行しましたけれども

このあと 果たして
脱出は成功するのでしょうか。

次回 更に読んでいきたいと思います。
はい。

ヤマザキさん ありがとうございました。
ありがとうございました。

ありがとうございました。

♬~

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