中国地方のなかでも,島根県東部の出雲地方から鳥取県西部の伯耆地方にかけては,荒神にその年の収穫を感謝する荒神祭が伝承されている。中国地方では,荒神は多様な性格をもって祀られているが,この地方の荒神は,農耕の神,あるいは牛馬の神として信仰されている。その祭りは,毎年収穫後の11月から12月を中心とする時期に行われ,巨大な藁蛇と大量の幣束をつくり,荒神を祀る樹木や石などに供えることを基調としながら,様々な形態をもって伝承されている。その呼称も地域差があり,出雲地方ではコウジンマツリ(荒神祭),伯耆地方ではモウシアゲ(申し上げ),タツマキサン(竜巻さん)などと呼ばれている。なかには,藁蛇を引きずり回したり,子供が藁蛇を隠したり,また、荒神を祀る場所に埋めた甕内の酒の発酵具体で豊凶を占うといった行事を伴う事例もある。かつては,伯耆地方で広く行われていたが,今日では中断したり、規模を縮小して行っている事例が少なくない。
powered by Auto Youtube Summarize