出典:EPGの番組情報
100分de名著ヘミングウェイ[終]4▽作家ヘミングウェイ誕生の軌跡~移動祝祭日[解][字]
「移動祝祭日」はヘミングウェイによる青春時代の回顧録。そこには、小説修業の様子が散りばめられており、彼の優れた創造力がどのように培われたのかを知ることができる。
番組内容
「移動祝祭日」はヘミングウェイによる青春時代の回顧録。フィッツジェラルドら世界文学史を彩る巨匠たちが集うパリの描写は彼らとの交流が彼にもたらしたものの豊かさを伝える貴重な証言となっている。とともに、小説修業の様子が各所に散りばめられており、彼の創造力がどのように培われたのかを知ることもできる。第四回は、作家ヘミングウェイ誕生の瞬間に立ち会い、人間が優れた創造力をもつには何が必要なのかを探っていく。
出演者
【講師】早稲田大学教授…都甲幸治,【司会】伊集院光,安部みちこ,【朗読】寺脇康文,【語り】小口貴子ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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- 一人
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- 回想録
- 頑張
- 仕事術
解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
作家ヘミングウェイの
青春回想録 「移動祝祭日」。
描かれるのは パリでの
作家修行時代のエピソード。
そして 名作を生んだ仕事術です。
第4回は 作家ヘミングウェイ
誕生の瞬間に立ち会い
多面的な文豪の姿を明らかにします。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
「100分de名著」 司会の安部みちこです。
伊集院 光です。
さあ 「ヘミングウェイ スペシャル」も
今回で最後です。
文章を書くということにおいて
どういう こう 設計図というか
システムが組まれてるのか みたいなのを
ちょっと知りたいですね。 はい。
先生 ご紹介します。
アメリカ文学研究者の都甲幸治さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
お願いいたします。
都甲さん まさに 今回取り上げるのが
ヘミングウェイの人生が分かっていく
作品なんですよね。 はい。
「移動祝祭日」というふうに
読むんですけれども
ヘミングウェイが20代にですね
結構 長いこと
6年ぐらいですかね
パリで修業期間を過ごしたと。
そこら辺のことを書いてあるですね
まあ ほんとに
青春回顧録といったものなんですね。
彼の いろいろ複雑さ 二面性
多面性みたいなものが あらわれていて
種明かしというのかな こういう人だから
こういうのを書いてるの みたいのが
分かってくるような
作品になっております。
ああ~。
こちらにも まとめてみました。
「移動祝祭日」は
ヘミングウェイが亡くなった 3年後の
1964年に刊行されました。
でいて 出来事自体は
若い頃の出来事なんですよね。
そうなんです。 随分 前のこと。
パリ時代にですね 旅の途中で なんと
それまでに書いた
作品全部が入った スーツケースを
盗まれてしまうんですよ。
ほう!
なんですけども この ヘミングウェイ
晩年に そのスーツケースが 奇跡的に
パリのホテルで発見されたんです。
おお!
で その資料を見てたら この1920年代の
思い出が いろいろ よみがえってきて
回想録を書いた。
はあ~。
もう その経緯だけでも
ちょっと面白いですね。 ほんとですよね。
で 登場する作家が すごい人たちで
ガートルード・スタイン
ジェイムズ・ジョイス
スコット・フィッツジェラルドなど。
ポイント 前書きでして
ここに 「フィクションと見なしてもらっても
かまわない」とあるんです。
え? ってことは?
フィクションと見なしてもらっても
かまわないというふうに言われると
いやいやいやと。
ほんとは ノンフィクションなんでしょ?
というふうに
多少 こう ふわっと
誘導してると思うんですよね。
なんですけども…
最も大きなフィクションが
これ結構 ものすご~く貧しいながらも
一生懸命 文学修業に打ち込んだ時代
っていうふうな
回想録になってるんですけど
実は 奥さん ハドリーって方が
割と資産家の家系の方で
かなり大きな収入があった。
何か トリッキー。
最後にきて 相当トリッキーな。
で しかも その実在する作家が
いっぱい出てくるわけで…。
ここは実名ですものね。
そうなんですよ。
実名で 交流は
かなり詳細に書かれてるんですよね。
で これも ほんとのとこ あるいは
ほんとの 一部分を引き伸ばしてるとこ
いろいろあるので
まあ そういうのも読みどころですね。
読んでいきましょう。
朗読は 俳優の寺脇康文さんです。
タイトルの「移動祝祭日」は…
ヘミングウェイは
パリで過ごした 20代の日々を
この祝祭に たとえました。
当時 パリには
世界中から 芸術家が集まっていました。
特に 第一次世界大戦で
超大国への道を歩みだしたアメリカから
強いドルを携えて
多くの作家が やって来ました。
ヘミングウェイも
そんな一人だったのです。
そこで親交を結んだ作家の一人
ガートルード・スタインについては
こんなエピソードが書かれています。
スタインが 若者を批判して 口にした
「ロスト・ジェネレーション」という言葉。
後に ヘミングウェイは
長編小説 「日はまた昇る」に
この言葉を引用します。
これをきっかけにヘミングウェイの世代を
指す言葉として広まったのです。
もう一人 無名だったヘミングウェイに
大きな影響を与えた人物がいます。
出版社を紹介してくれた
スコット・フィッツジェラルドです。
「移動祝祭日」には
フィッツジェラルドから
リヨンの旅に誘われた時の
エピソードが載っています。
著名な作家と旅ができると喜んだ
ヘミングウェイでしたが
当日 フィッツジェラルドは遅刻。
おまけに
ドライブの途中で
体調を崩したりと
旅は さんざんなものに。
ヘミングウェイは その時の不満を
こう つづっています。
フィッツジェラルドは 「日はまた昇る」
これは ヘミングウェイ 一気に世界的に
有名になった作品なんですけども
草稿を見て 細かく直して
出版社を紹介してもらい
これ以上ないぐらい
大恩人なんですけども
ちょっと困った人だったねっていうふうに
書いてある。
あるいは スタインに関しては
文章の書き方
すごく重要な書き方について
手取り足取り
学んだことがあるんですよね。
そうなのに ちょっと嫌みっぽい
おばさんだったよね みたいな
感じでしか出てこないんです。
ものすごく その大恩人を悪く書くのは
何でなんだろうと思うんですが。
この時代 ヘミングウェイはですね
もう 実績も すごくて
ほんとに 世界で一番有名ぐらいの
作家になってる。
なので 他の人のことは褒めないよって
やってるのかなっていうのは
一つ 思いました。
あと それから この当時は
まだ 天才は独創的で
誰からも学ばずに 内側から 次々
アイデアが湧いてくるみたいな考え方が
結構 強かったんですよね。
本人も そう思いたい。
すごく このこと よく分かるんですよね。
いや 分かりますか?
へえ~!
若い頃に すごくお世話になってた
ベテランの 構成の作家さんが
いらっしゃって。
僕が出したアイデアを
彼が すごい直してくれたおかげで
すごいヒット企画にはなったんです。
で そうすると
彼が今度 回顧録を書く時に…
彼自身が作ったり 寄った時に
あんなに感謝してたんだけど
あれは 俺のオリジナルのものを
ちょっと アドバイスくれただけじゃん
みたいなものが
ふつふつと湧き上がってくるんです。
でいて いや その
彼の こういうところの工夫がないと
僕の企画は とがりすぎてて
駄目だったって思うんですけど
そのまま無加工でやったら もっと
ウケてたんじゃないの? みたいな
傲慢も顔を出すんです。
さっき教えて頂いたように
フィッツジェラルドは出版社を紹介する。
で スタインは
書き方を教えたんでしたよね。
具体的に
どんなお世話をされてたんですか?
切り詰めて書くみたいのは まあ もともと
自分でも思ってたんですけども
そうすると やっぱね
奥行きというか 広がりというか
厚みが なかなか出ないというので
悩んでたんですよね ヘミングウェイは。
新聞記者の書き方だと。
その時に
あなた ちゃんと見てないからよと。
学びなさいっていう
指導をするんですよね。
セザンヌの絵って 結構 革命的だって
美術史では いわれててですね
ヨーロッパ 昔あった
遠近法というのがあるんですよね。
遠近法 一つのところから見て
全部 機械的に配列するっていう…
だけど セザンヌは
いろんな方向から見たのを
全部 一緒に描いちゃってる。
で そういうふうに 多焦点で見るって
いうのを学びなさいっていうふうな
決定的なことを教えるっていうのが
あるんですよ。
その 多角的な ものの見方
遠近法って ある意味 理屈に合った
決まりの見方とは違う
感覚というものだというのは…
そうだと思うんですよね。 やっぱり…
また テーマが一貫しちゃうんですよ
ここで。
面白い。
すごい つながりましたね。
で 僕が この本でね
結構 読みどころだと思うのは
仕事術を 結構 開陳してるんですよね。
こう 今までにないものを
作ろうとしてる人には
ほんとにね 役に立つ
ビジネス書として
読めちゃうんじゃないかぐらいの部分が
結構 いっぱい出てくるんですよね。
へえ~。 じゃあ その役立ちそうな
ヘミングウェイの仕事術
読んでいきましょう。
小説のアイデアを思いついた時
ヘミングウェイは
あえて 書くのを中断していました。
次の展開を思いついたところで
書くのをやめていた理由。
それは 頑張って書き続けると
創造力が かれてしまうと
考えていたからです。
更に 創作のための読書術についても
触れています。
読むのは 現役作家の本で
エンターテインメント性の高いもの。
その方が
脳を酷使しないので よいのだとか。
自らの小説技法についても 述べています。
ヘミングウェイが編み出した
「氷山の一角」理論といわれる
省略のテクニック。
ある短編を例に こう説明します。
うわ~…。 今の 1時間ぐらい
質問攻めにしたいぐらいの
すごいこと 書いてますね。
すごいんですよ ほんとに。
ちょうど 同時代に書いてた作品で
「白い象のような山並み」っていう
相当 有名な作品があるんですけど
それは 登場人物最低限で まあ 男 女。
どうやら 妊娠してるんですよね。
それで 中絶させたい。
でも 女性の方はしたくないと。
で それを ず~っと最初から最後まで
言い合うだけなんですけど
ポイントは 「中絶」とか「子ども」という
言葉が 一回も出てこないんです。
だから 最初 通しで読んでも
何で もめてるのか 分からないんですよ。
なのに 細かいとこを見ていくと
あっ 多分 中絶の話なんだろうなって
分かるようにできている。
作品の中に…
…っていうのが まあ 彼の
言いたいことなんだと思うんですよね。
すごいな~。
あと びっくりしたのが あの
思いついたところで やめるっていう。
これも
めちゃくちゃ重要だと思うんですよ。
もうパクリます。 すぐパクリます。
思いついたとこで やめるというのは
何かというと
まだ ちゃんと発酵してないから 今日は
だから 次の展開が思いついたところで
やめなきゃいけない。
嫌になる直前で やめるとか
あるいは 頑張るっていうやり方をしない
とかいうふうなことを
言ってるんですよね つまりね。
へえ~。
う~ん。
すごい。 もう すごいわ。
この回 放送しないでほしいわ。
(笑い声)
この回を放送せずに
今すぐ この本を絶版にしてほしい。
誰にも知られないように。
誰にも知られたくないです。
若手には読まれたくない。
読まれたくない。
何か 追い詰められてる時ほど
今 思いついたことの勢いでいっちゃおう
と思うんですけど
そこの突き当たりは
割と早く来るじゃないですか。 はい。
100ページ 書かなきゃなんないのに
今 へとへとになるまで
60ページ書いたところで
もう 残りの40ページなんか
何にも出てこないんだから。
それだったら へとへと前の
40ページのとこで止めておいて
ちょっと 力抜いたらっていうのは
すごいコツをもらいました。
もう一個 コツを言っててですね
儀式のように…
同じカフェに行って
同じ時間に座って 同じだけ書く。
あるいは仕事場で とかで。
そういうふうにすると
ここに来れば 書くっていうふうなのを
だんだん 体に しみこんできて
で 書き続けるペースができる。
俺ら やっぱり
ちょっと その スパルタだったり
ガッツとかの世代では まだあるので
嫌いになっても やる みたいなことを
随分 こう 教育されてきて
大事な局面もあるんだろうけれども
創作とかは
そうじゃないんじゃないかなとか。 うん。
出会いと発見に満ちた
ヘミングウェイのパリ時代
どのように終わったのでしょうか。
見ていきましょう。
輝かしい青春の始まりを予言するような
前書きで始まる 「移動祝祭日」。
しかし 本文の書き出しには
暗い影が さします。
作中の悪天候は
その先の人生を暗示していました。
作家として売れていく一方
私生活では
離婚を経験。
更に この回想録を執筆していた
1950年代後半
アルコール依存症に伴う
うつ病を発症していました。
そして 1961年7月 何度かの自殺未遂の末
ついに命を落とします。
才能が開花し 革新的なアイデアが
次々と湧いた青春時代を振り返り
晩年のヘミングウェイは
何を思ったのでしょう…。
「移動祝祭日」に書かれた パリは
彼の中で
理想化された姿なのかもしれません。
頭の書き出しとは 随分違う感じの。
それと あと 僕の勝手に 雑に思っていた
ヘミングウェイという人とも かなり違う。
これを執筆していた時期というのは
もう ほんとに晩年の
どん底時代なんですよ。
で うつが激しくなる 妄想が出る
それに加えてですね
1954年に 2回連続で 飛行機事故に
アフリカで遭った
というのがあるんですよね。
次々と 不幸に見舞われるんですよ。
ノーベル文学賞を せっかく取ったのに
もらいに行けない体調だったんですよね
このころはね。
このあとですね ヘミングウェイは
人生 仕事面では
めちゃくちゃに成功していくんですよね。
だけど ある程度 頑張ってきて
いろいろ 手に入れたつもりだけど
でも あの若かった頃の
何にも持ってなかったし
ばかだった頃に 普通に持ってたものは
もう失ったかなっていう
そういう ノスタルジーの感じをですね
すごく かきたてるというか。
誰しも そういう気持ちって
あると思うんですよね。
その どんなに憂鬱でも
あのころのことを考えると
ちょっと楽しくなったりとか
うっとりしたりするんでしょうね。
それを
「移動祝祭日」っていうんでしょうね。
「老人と海」 で「敗れざる者」
ここには共通性があったけど
最後 急に違う感じのやつ出ましたねって
今日のオープニングで言いましたけど
同じですよ これ。
同じ。
うん 確かに。
しかも…
これ書いてるのと
その 先の 2つの作品の主人公と
全く変わらない気が 僕はしちゃう。
はい。
ぴったり重なりましたね。
都甲さんは 今 ヘミングウェイを読む
読み直す意味というのは
どうお考えですか?
はい。
まあ めちゃくちゃ いっぱい
あるんですけども
例えば 国籍が違う 文化が違うとか
あるいは 海だったりとか…
分かったふりをしないで
自分なりに 誠実にしていくという
ある種の倫理的な姿勢っていうのは
やっぱ 今回 読み直して
すごく 打たれたところでした。
何か その
読んでないということの恥ずかしさも
すごい いっぱいあったんですけど
読んでなくて 先入観がないからこそ
今 1回目を読みなさいよっていう
考え方もあるっていう。
ぜひぜひ 読みたいなと。
はい。
都甲さん ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
東京都に お住まいの
まっちゃさんです。
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