出典:EPGの番組情報
100分de名著 アリストテレス“ニコマコス倫理学”[新](1)倫理学とは何か[解][字]
新生活がスタートしてまもない5月。職場や学校に適応できず悩む人が多いこの時期に「ニコマコス倫理学」を通して「生き方」「幸福のあり方」を哲学的に考察する。
番組内容
「ニコマコス倫理学」は、哲学史上初めて「倫理学」を体系化した書物。「倫理学」と訳されているギリシア語は、語源的には「人柄に関わる事柄」という意味だ。どのような人柄を形成すれば幸福な人生、充実した人生を送ることができるのかを考察するのが彼の倫理学なのである。第一回は、「倫理学」とはどのような学問なのか、「倫理学」を学ぶことにはどのような意味があるのかを、アリストテレスの論に基づいて考察する。
出演者
【講師】東京大学大学院総合文化研究科教授…山本芳久,【司会】伊集院光,安部みちこ,【朗読】小林聡美,【語り】小坂由里子ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
今から 2, 400年ほど前
古代ギリシャに 一人の男がいました。
西洋最大の哲学者の一人 アリストテレス。
「万学の祖」と呼ばれる彼は
あらゆる物事を探求しました。
例えば 動物や気象など
自然を観察し 分析。
多くの都市の在り方を見て
理想の国家を考察します。
そして そこに生きる人々を見て
こう考えるのです。
アリストテレスの考えは
今を生きる私たちにも
驚くほど刺激を与えます。
今月は アリストテレスの
「ニコマコス倫理学」を取り上げ
4回にわたって 読み解きます。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
「100分de名著」
司会の安部みちこです。
伊集院 光です。
さあ
今回 ご紹介する名著は こちらです。
古代ギリシャの哲学者 アリストテレスの
「ニコマコス倫理学」です。
伊集院さん 聞いたことはありますか?
アリストテレスは
さすがに聞いたことありますけど
頭に浮かぶのは 石の感じです。
いわゆる写真とか そういうことじゃ
ないじゃないですか もはや。
像になってますね。
それぐらいで
この本の名前とかは分からないです。
像になるような有名な哲学者
しかも 古代ギリシャ
しかも
今回の本は これぐらい厚みがあります。
おお~ 何かちょっと
嫌な予感が。 …しか しませんね。
でもですね この本は 哲学書の中では
とても読みやすいとおっしゃる方が
今回の指南役なんです。
あらそう。 ご紹介しましょう。
東京大学大学院教授の山本芳久さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
お願いします!
今回の指南役は
東京大学大学院教授 山本芳久さん。
専門は 西洋中世哲学や倫理学。
「ニコマコス倫理学」は
大学の講義で使っているそうです。
この番組 これまで何冊も
哲学書は取り上げているんですが
まあ 毎回 苦戦をしてますよね。
はい 苦戦を強いられています。
ただ この「ニコマコス倫理学」は
読みやすい方なんですよね。
そうですね 私自身 高校時代ぐらいから
哲学の本を読むことがあったんですが
なかなか この 興味を持って
読み通そうとしても
一冊の哲学書を
読み通すことができない。
その中で
この「ニコマコス倫理学」という本は
初めて 最後まで通読することができた
哲学書なんです。
論述自体が比較的 平易なのと
幸福とは何かとか
誰もが 若い時から
一度は関心を持つ
そういう問題について
深く論じている本だと思います。
頼もしいのはね 先生が 学生時代に
いくつか哲学書を挫折してきた中で
読めたっていうのは
まあ 多少 頼もしいんですけど
でも 先生だから 後の先生が読めた
っていうことだからな みたいな。
同じこと 思ってます。
ねえ。
先生は この本を大学のテキストで
今 使ってらっしゃるんですけれども
学生さんの反応は どうなんですか?
そうですね 学生さんも 二千数百年前に
書かれた本とは思えないくらい
自分自身のことが書かれているんじゃ
ないかというような感じで
分かりやすく読むことができたと。
僕だって もう54ですから
20代の学生が そうやって
読めたっつってるんなら。
東大生ですけどもね。
フフッ 言うな…。
頑張ります はい。
はい 頑張っていきましょう。
では まず
アリストテレス 「ニコマコス倫理学」の
基礎情報から 見ていきましょう。
古代ギリシャの都市国家 アテナイ。
アリストテレスが
哲学を学び始めたのは 17歳の時のこと。
師匠プラトンのもとで
20年ほど 学びました。
その後 アリストテレスは
自らの学校を作りました。
人々に教え 共に議論をする。
探求し続けた人生の中で
生涯に 550巻もの著作を残したと
いわれています。
しかし ギリシャが衰退した後
その著作は散逸していきました。
再び注目されたのは 9世紀。
イスラム世界で
研究が行われました。
12世紀には西ヨーロッパにも
持ち込まれ
多くの哲学者に
影響を与えたのです。
そんなアリストテレスの姿が描かれた
名画が バチカン宮殿にあります。
16世紀 ラファエロが描いた
「アテナイの学堂」。
古代ギリシャの哲学者たちが
勢ぞろいしています。
中央にいる2人が
アリストテレスと 師匠のプラトンです。
注目すべきは
アリストテレスが手にしている書物。
「ニコマコス倫理学」を描いたとも
いわれています。
倫理学の原点と言われる
「ニコマコス倫理学」。
今も 哲学を志す人々が
必ず手に取る一冊です。
やる気が出るのは
この本が 今から古びたりとか
その 無意味になったりすることって
ありえないわけじゃないですか。
ほんとですね。
最新刊は 読んでみたら もしかしたら
5年後に 時代に合わなく
なっちゃってるかもしれないけど
これに関しては その心配はないから
きちんと読み解きたいって思いますね。
そうですね。
2, 000年 読み継がれてるんだから
このあとも きっと ずっと
読み継がれますよね。
それは間違いないでしょう。
さあ じゃあ「ニコマコス倫理学」
このあと 読んでいきますけど
第1回のテーマは
「倫理学とは何か」なんですね。
伊集院さんの倫理学のイメージ
というのは どんなものですか?
何か こうやって生きなさい
こうしなさい みたいなイメージです。
ちょっと お説教じゃないけど。
ただ 倫理学は
いくつか種類があるそうなんですね。
代表的なものが この2つです。
1つ目が 「義務論的倫理学」
そして 2つ目が「幸福論的倫理学」。
山本さん まず
こちらの1つ目の
義務論的倫理学というのは
どういうものですか?
義務論的倫理学の代表者は
ドイツの哲学者のカントです。
義務に基づいた行為を
人間は する必要があると。
2つ目のこちらは 幸福論的倫理学は
どういうものなんでしょうか?
そうですね まさに これが
アリストテレスの倫理学なんですが…
幸福になっていけるかどうかが
ポイントなんですね じゃあ こっちは。
ええ そういうことになります。
2, 000年前も今も
そんなこと 知りたいですね。
だから古びれないのかなとは
思いますね。 そうですね。
まさに 1, 000年単位で
この 多くの人の問いに答える
そういう書物になっているということが
言えるんではないかと思います。
では
いよいよ 本文に入っていきますが
読み始める時に
気を付けるポイントはありますか?
優れた古典というのは 多くの場合
冒頭の一文に 全てが込められていたり
そういうことがありますので
この一文一文 とても丁寧に
読んでいくことが必要だと思います。
はい。 じゃあ最初の文章から
一つ一つ 丁寧に読んでいきましょう。
朗読は 俳優の小林聡美さんです。
皆さん こんにちは。
倫理の時間です。
どうすれば幸福を実現することができるか
一緒に考えてゆきましょう。
それでは早速
「ニコマコス倫理学」の冒頭から。
アリストテレスの言う
「みんなが目指す善」とは何か?
勉学に励む 高校生のA子さんを例に
考えてみましょう。
なぜ 勉強するの?
大学に入りたいから。
なぜ 大学に入りたいの?
大学に入ったら
専門知識が身につくでしょ。
なぜ 専門知識を学びたいの?
専門知識があったら
就職しやすいから。
なぜ 就職したいの?
お金を稼いで
仕事も頑張って…。
それから? そうだなぁ…
立派な社会人になる。
私たちは 何か価値あるもの
「善」を目指して 行動している。
その行動の目的を
明らかにすることが大切。
アリストテレスは
こんな提案をしています。
つまり 最終的な目標を決めておいた方が
いいんじゃないかと言ってるんです。
じゃあ その最終的な目標って
一体 何でしょう?
実は それこそが「幸福」だと
アリストテレスは言うんです。
どうですか?
分かりますか?
「よい人生って 何だと思います?」
みたいな質問って あるじゃないですか。
それ なかなか即答できなくて
何をもって よいだろうって
考えることがあるんだけど
何か それに近いような…。
ちょっと整理していくために
こちらをご覧頂きましょう。
はい。
「目的の連鎖」とありますが
先ほどの映像にもあったとおり
高校生が勉強する そして大学に入る
大学に入ったら 専門知識を身につける
そうなると よい社会人になれる
最後には幸福になるという
流れでしたよね。
…というふうに
アリストテレスは考えます。
その際に じゃあ 永久に連鎖していくのか
というと そうではなくて
最終的に この目的とされる
究極目的と言われるものがある。
それが幸福になるということだと
いうふうに
アリストテレスは考えています。
僕は もともと落語家なんですね。
その落語の中に 落語のマクラって
最初 現代の話に出てくる 受験戦争の話で
寝てばっかりいる子供に
「お前 勉強しろよ」と言うと その子供が
「何で勉強するんだ」と言ったら
「勉強したら いい高校 入れるだろ」って。
「いい高校 入ったら どうなるんだ」。
「いい大学 入れるだろ」っつって。
いい大学 入ると… で
それを ずっと言ってくと
いい会社 入れるだろ。
いい会社 入ると 給料が高ぇだろ。
で 給料が高ぇと 寝て暮らせるだろって。
だから 今 寝てるんだよっていう
その話があるんだけど
それは多分 連鎖したものの
その「幸福になる」が
抜けている話だと思うんです。
そこが ずっこけるポイントだから。
大切なのは そこですよね 最終的にはね。
ちゃんと連鎖して
最終的な目的があるということかな。
幸福になるのが最後
ここから先というのはないんでしょうか?
そうですね 例えば この図で大学に入る
というところを見てみると
勉強するというところとセットで見ると
目的になってるわけですね。
でも 専門知識を身につける
というところと セットで見ると
大学に入ることによって 専門知識を
身につけるというようなしかたで
今度は 手段になるわけです。
ですので 目的にもなれば 手段になる。
他方 幸福になるというのは
目的にはなっても 手段にはならない。
幸福になることによって
何をするんですかという問いは
もちろん 聞くことはできますけど
非常に奇妙な問いですよね。
そういう意味で…
…というふうに
アリストテレスは述べるわけです。
例えば その 大金持ちになるとか 会社で
どんどん出世して 社長になるとか
そういうのは 幸福と言えるんですか?
そうですね アリストテレスは 結構
常識的なことを大事にする人なので
お金を稼ぐとか 社長になるとか
それはそれで
大きな意味があるというふうに考えます。
でも お金を稼ぐことによって
どうするんですか? とか
社長になって どうするんですか?
という問いは 十分 可能なわけですよね。
そういう意味で 先ほどの幸福とは違う。
…というふうに アリストテレスであれば
答えると思います。
いや何か 資産数千億 持ってても
あの人 幸福に見えない
みたいなこともあるし すごく分かる。
ここまで大丈夫ですね。
じゃあ 倫理学が どういう学問であるか
もう少し詳しく見ていきます。
「万学の祖」と言われたアリストテレスは
さまざまな学問を生み出しました。
それらを 大きく
この3つに分けているんですね。
「理論的学」
「実践的学」 そして「制作的学」です。
今回扱う 倫理学は
ここに 実践的学に
分類されているんですね。
理論的学というのは
知ること自体を目的にする学問で
他方 実践的学の場合には
知識を得ることのみではなくて…
これが 実践的学です。
やって 初めて
結果に向かっていくこと みたいのが
やっぱり この実践的学ですか?
ええ まさに そういうことです。
次に その特徴を見ていきましょう。
さて ここで問題です。
5+7は?
はい 正解。 12です。
もちろん 12以外ないですよね。
朝 学校で足したら 11.8だったけど
夜 部屋でやったら 12.5だったとか
そういうのはないわけです。
5+7は いつ どこでやっても 12。
数学というのは 「必然的に そうである
という事柄を探究する」学問なんです。
でも 倫理学は違います。
もっと 揺らぎのある事柄を
見つめるのだといいます。
善いものが 人々に災いを生じさせる。
どういうこと?
例えば 大金持ちがいました。
大きな家に 金銀財宝の山。
しかし ある日
その金持ちの家に強盗が侵入する。
盗まれるだけでなく
なんと 命まで失ってしまった。
富が不幸を招いたんです。
例えば
勇気ある若者が 戦場で戦っています。
戦いは 次第に負け戦に。
けれど 勇気ある彼は踏みとどまり
運悪く矢に当たって 死んでしまった。
勇気があったばかりに。
勇気や富というのは
常に どんな場合においても
善いものだとは言えないというわけです。
数学とは異なり 倫理学は
「おおまかに真実の輪郭を
示すことができればいい」と
アリストテレスは言います。
何か その 自分たちからすれば
いい大学 行ったからって
いい人生につながるとは限んないだろ
みたいなことで
もう 倫理的な人を
論破したと思ってたけど
そういうことじゃないですよって
もう 先に言ってんのね。
ちょっと恥ずかしいですね。
勇気や富があるがゆえに
滅んでしまうということもある。
じゃあ その勇気があってもなくても
同じなのか
富があってもなくても
どっちでもいいのかというと
そうじゃないんだと。
やはり 大抵の場合には
勇気や富があった方がよいという
そういう微妙な次元で
事柄をおさえようとする。
何ていうんですかね…
なるほど。 何か やっぱり
倫理のイメージ 全然 変わっちゃったな。
これが いいことなんだから
絶対やれって
これが 絶対 正しいみたいなイメージが
すごくあったんで。
全然 そんなことは言ってないですね。
そうですね。
では 次は 倫理学を学ぶ人について
見ていきましょう。
アリストテレスは
ズバリ こんなふうに言っています。
これまた すごいこと
断言してるんですけど
それこそ 先生は 東大で
これ 若者に教えるわけじゃないですか。
そうですね。
にもかかわらず
こんな文章が出てきちゃうんですね。
やはり 毎年 この点について
質問してくる学生はいるんですが
アリストテレス自身が
言ってるんですが
必ずしも生物学的な年齢のことではなくて
まあ いわば精神年齢のことで
大学生であれば
まあ 基本的には大丈夫だと思います。
そもそも そのアリストテレスは
なぜ 経験が少ない若者には不向きだって
言ってるんですか?
そうですね 大抵の場合に当てはまる
事柄を取り扱うわけですね。
数学のように
何か 必然的な真理ではないので
常に当てはまるわけではない。
なので
一回一回 判断しなければならない。
そうすると…
年齢を重ねた人の方に向いてますよと
言ってはいるものの
例外はあるわけじゃないですか
逆に言うと。 そうですね。
若者の中でも 精神年齢の高さ
これは特殊な経験をしてる若者なのか
そういう素質があったのかは
分からないけど
その人は学ぶ意味もあるだろうし
ちゃんと学び取ることもできるだろうし。
そうですね。
それに アリストテレスは 一旦 人間が
この人柄を ある方向に形成し始めると
どんどん加速度的にそっちに行ってしまう
というようなことを言ってるんですね。
その意味では 大人になってからよりも
ある程度 若い時に
まだ この人柄が柔軟に変わりうる時に
これを読んで 何かを学んで
少しでも幸福になりやすいように
何かを得ていくということが
むしろ大事ではないかなというふうに
私は思っています。
この番組 やってて
よく感じることなんですけど
中学生の時の僕が その名著を読んでも
理解はできなかっただろうけども…
でいて そのあとに 迷った時に
もう一回 読み返すことで
なるほど 言っていたっていう
名著の読み方とか
学問の身につけ方って
あるじゃないですか。
それで言うと この文章の中では
若者に向かないよって言ってるものの
別に 早く出会っててもいいし
それが 自分の中で機能し始めたりとか
より知りたいとか より理解するまで
少し時間がかかったとて
まあ 何ら問題はないし 下手すりゃ
得な話でしょという感じはしますね。
まさに その 「楔を打ち込まれる」って
とてもいい言葉ですね。
…と アリストテレスは
言ってるんですが
その言葉だけでも
心に刻み込まれるだけで
全然 違ってくるのではないかなと
思います。
これが こちとら
全く 何の楔も打たれないまま
いい年 こいちゃったもんで。
これから それが生きてくるんです。
そうです。 これからって。
この番組 始めてから
随分 楔は…。 はい。
まあ でも
第1回だけでも盛りだくさんでしたよね。
今まで 哲学書だ 難しいって言われて
いろんなものに関わって
やっと 4夜かけて
ある程度 吸収してきましたけど
分かりやすいというか
入ってくることが すごく多いです。
では 山本さん ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
♬~
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