SWITCHインタビュー 達人達「川井郁子×大平貴之」[字]…の番組内容解析まとめ

出典:EPGの番組情報

SWITCHインタビュー 達人達「川井郁子×大平貴之」[字]

情熱のバイオリニスト・川井郁子×世界的プラネタリウム・クリエーター大平貴之。人はなぜ星空に惹(ひ)かれ、その先に何を見るのか? 美しい星空と音楽に浸れる50分間

番組内容
情熱のバイオリニスト・川井郁子×世界的プラネタリウム・クリエーター大平貴之。全く異なるフィールドで活躍する2人の共通点は、星空。560万個もの恒星を映し出すプラネタリウムを個人で開発し、ギネス世界記録にも「もっとも先進的」と認められた大平。一方の川井は、美しい星を見ながら数々の作品を生み出してきたという。人はなぜ星空に惹(ひ)かれ、その先に何を見るのか? 美しい星空と音楽にたっぷり浸れる50分間。
出演者
【出演】バイオリニスト・作曲家…川井郁子,プラネタリウムクリエーター…大平貴之,【語り】六角精児,平岩紙

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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  20. 大事

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

NHK
created by Rinker
エンスカイ(ENSKY)

♬~(演奏)

情熱のバイオリニスト…

去年 デビュー20年。

国内外のオーケストラと共演する

世界を舞台に活躍する音楽家だ。

クラシックの枠を飛び越えた

「ジャンルにとらわれない音楽」を
追求してきた川井。

作曲家としても 2013年

映画「北のカナリアたち」で…

…に輝いた。

そんな川井の音楽の源となるのは…。

…っていうところが一番楽しみですね。

プラネタリウムが映し出す
果てしない星空。

これまでの100倍以上

数百万個の星を映すプラネタリウムで

世界から注目を浴びた男がいる。

目には見えない小さな星まで
忠実に再現した星空。

場所を選ばない 大平のプラネタリウム。

洞窟や

イベント会場。

さらに ドーム球場の天井には

世界最大規模の星空を映し出した。

そんな彼を人は

「プラネタリウムの革命児」と呼ぶ。

2人が抱いてきた「星への願い」が
今夜 共鳴。

星空や宇宙っていうのは
夢とかロマンとか…

日常とは違う
浮世離れしたものだったところが

あると思うんですけども…

自分たちや…

一番大事なのは…

♬~

川井が大平を訪ねたのは
東京 高田馬場の結婚式場。

こんにちは。
こんにちは。

はじめまして。
はじめまして。

川井です。
大平です。
よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。
お会いするのを楽しみにしてました。

こちらこそ すごく楽しみにしてました。

じゃあ よろしくお願いします。
お願いします。

教会なんですね お会いするのが…。

プラネタリウムかなと
思ってたんですけど。

普通ね プラネタリウムって こう
丸い天井の場所だと思うんですけど

最近 僕は そういう丸い天井以外の所で
星を出すというのが 結構 多くてですね。

そこは もう… ここが そういう意味では
一つの典型なんですけど。

こういうふうに ステンドグラスがあって。

実は ここ 結婚式場で

ここで星空を映してるんですね。
ああ すてき!

一つ お願いがありまして。

目を閉じていただいてよろしいですか?
はい。

じゃあ 3 2 1…。

はい。 それでは 目を開けてください。

ああ… すご~い…!

はい そうなんです。
ええ~… すごい!

う~ん… きれい…。

今 ちょうどね 頭の上を
横切ってる

ぼんやりとした光の川みたいなものが
あるんですけど

これが天の川ですね。

実際には これ…

えっ そうなんですか。

何か もう 距離感が
分かんなくなってきますね 見てると。

ああ そうですね。
果てしなく見えますね。

街の明るさで星が見えない都会でも

宝石を ちりばめたような星空を
楽しむことができるプラネタリウム。

「最も美しい星空を再現しました」。

すごっ…!
「これが満天の星です」。

中でも 大平が作るプラネタリウムは

従来のものに「革命」をもたらしたと
いわれている。

どうして この結婚式場で

このプラネタリウムをって
お考えになった理由は何なんですか?

そうですね… やっぱり 結婚式ってね
人生の大事な瞬間じゃないですか。

そこで 星空が映ったらいいな
というのは昔から思ってました。

もう一つは やっぱり これ…

なので 今までは そういうことが

やりたいと思っても
なかなか できなかったんですけど

たまたま 僕が こういう…

運べる そして たくさんの星を映せる
プラネタリウムを作ったことで

自然に それが
かなうようになったんだと思いますね。

意外なほど小さいですよね。

あの壮大なものを映すの…
こんなコンパクトなんだと思って。

そうですね。 よく 驚かれますけど

普通 プラネタリウムって
かなり大がかりな設備で

なかなか そこから運んで
どこかに持ってね…

別の場所に持っていくっていうのは
難しいものですし

あと やっぱり
専用の丸いドームがないと

星は きれいに映らないっていうふうに
普通に 思われてたんですね。

でも 実際には こういうふうに
持ち運びできるものを作って

で 最初
丸いドームで映してたんですけど

「それ以外の場所で できないの?」って
言われて 運んで映してみたら

結構 きれいに映るわけですよね。

それから
もしかしたら プラネタリウムの…

…っていうふうに思うようになって

その大事な一つが

この結婚式場だったんですね。
ああ なるほどね。

それは大きいですよね
場所を選ばないっていうのはね。

そもそも この… どういう仕組みで

ああいうふうに映るんですか?
この機材から。

仕組みは まあ 複雑なように見えて
実は 原理は単純なんですけども

中に 強い明かりがあって

ここに 表に
たくさんのレンズがありますよね。

ちょうど これ…
その一つが ここにあります。

ちょっとね これ…

これが 一個一個が この中に
すぽん すぽん すぽんって

はまってるんですけども
この中に 星のもとが入ってるんです。

ちょっと これをね 光に 透かして
ちょっと 見ていただいてもいいですか。

これをね こっちからですね…。

そうすると中に…。
あっ!

すごい…!
はい。

この中に
星が たくさん詰まってるでしょ?

いっぱい詰まってて…。
ああ もう 何か すごい。

大平のプラネタリウムが
注目を浴びたポイント。

それは これまでの100倍を超える
数百万個の星を映せること。

肉眼では見えない星まで
忠実に再現する技術の秘密は

投影機のレンズの中にある円い板。

星のもととなる…

レーザーで開けたミクロの大きさの穴が

一つ一つ集まり 数百万の星を作っていく。

大平は
この驚きの技術を たった一人で開発。

より奥深く リアルな星空を作り出した。

今までのプラネタリウムって

大体 9, 000個ぐらいの星を
映すものだったんですけど

それでも
十分だっていわれてたんですね。

星座とかは 十分 出せますし。

でも 僕のプラネタリウムは
数百万個の星を映すようになりました。

これは ちょっと ざっくり例えると…

あるところで
スポ~ンと切ってしまうのか

それよりも もっと…

それで 目で見えないんだけど
かすかな星が無数に背景にあって

うっすらと薄明るくなっていて

その 特に明るい星が
天の川となって浮かび上がって見える。

この微妙な感覚を
表現するっていうところが

たぶん 今までと
一番違ったんだろうなと思います。

ああ そうなんですね。

目には見えないようなものから
全部 再現すると

ああいう奥深さになるっていう。

そうおっしゃっていただけると…。

なるほどですね。
いや もう 音楽と同じですね それは。

あれって 細かい雑音が
いっぱい入ってるんですよ お客様の。

でも…

そういうこともあって…。

ねえ こう… 本当 同じなんですね。

大平は…

工作や機械が大好きな少年だった。

近所にプラネタリウムがあって
そこに行って…。

初めて見たのは
幼稚園のときだったんですけど

そのときは もう
怖かったのを覚えてます。

…って やられるわけですよ。
ひどいでしょう? それも。

そんなのあったんですか。

それで もう 「こんな怖いとこ
二度と来るもんか」って

幼心に思ったんですけど。

でも 今 思うと そのときに
印象を植えつけられたんですね。

それで それから
小学生のときに行ったら 今度は

「すごいな。 こんなふうに…」

…っていうふうに
いつの間にか なってたんですね。

そうですか。 面白い。

やっぱり 良くも悪くも
インパクトが すごかったんですね。

そうですね。
やっぱり あったんでしょうね。

真ん中に こんな でかい機械があって

「どうやって この機械が
星を映してんだろう?」とかね。

それで プラネタリウムも 自分で
やってみたくなったんでしょうね。

そもそも 作り始められたのは

いつぐらいからなんですか?
プラネタリウムを。

あの… ちょうど… そうですね。

もちろん こんなもんじゃないですよ。

夜光塗料ってあるじゃないですか
暗いとこで光る。

あれを紙に塗って
細かく刻んで壁に貼ってみたんですね。

それで 明かりを消してみたら
星座の形に見えたんですよね。

それが最初です。
へえ~。

でも それから 一つ うまくいくと
すごく その… もっと…。

なので もっと いいものを作りたい
もっと いいものを作りたい。

それで
結構 周りの人も喜んでくれるので。

それが うれしくて

だんだん こう 凝って 凝って

エスカレートしていって…
ってやってきて。

小学生のときに大平が作った
プラネタリウム。

紙に穴を開け 電球の光で星を表現した。

小学校6年生で
投影機の設計図を書いた。

実物のプラネタリウムを研究し

細部の構造を考えた。

高校時代からは 開発はエスカレート。

大学は 工学部に入学。

完成させたのは レンズで投影する

本格的なプラネタリウム投影機。

個人が開発したものでは
世界初となるものだった。

その後 大手電機メーカーに就職。

仕事のかたわら こつこつと開発を続けた。

そして ついに 150万個の星を映す
革命的なプラネタリウムを作り上げ

世界を驚かせた。

お一人で 世界一の星空を
作り上げたわけですけど

どうして 一人で できたんでしょうね?

逆にね…

当時は
そうは思わなかったんですけど

今 何となく 想像がつくのは
もし 会社であったら

そんなに極端に星の数を増やしたいって
考えても

勝手には できないじゃないですか。
上司を説得したり…。

じゃあ それに意味がある
それによって 売り上げが立つとか

いろんな… 会社としての理由が
必要なんですね。

でも…

100万個 星を映しても
笑われるだけかもしれない。

そうすると じゃあ そんなものを
作りたいって誰かが思ったとしても

それを実現するには まあ いろいろ…

上司を説得するとか社内政治力とか
いろんなことが必要になって。

たぶん 僕 そういうの下手くそなんで
たぶん 無理なんです。

で 実際に 企業から
そういうものが生まれなかったのも

たぶん そういうことなんだろうな
っていうふうに思います。

逆に 一人だったら 大変ですけど

でも 自分の考えた
突拍子もないアイデアを…。

誰かを説得する必要もない。

自分で… 自分のポケットマネーを
はたいて 作ってしまって

出してしまえばいいだけなんで。

つまり これは
どういうことかっていうと…

何でも そうですけど
プロとアマチュアって

プロが上で アマチュアが下
っていうのが… 言いますよね。

だけど 僕は
必ずしも そうでないと思ってて。

当たり前ですよね
お金をもらうことだから。

今 僕は プロとして仕事をしてるので
すごく分かります。

でも プロ意識って
すごく大事なんですけども

それだけだと あの…

今 目の前にいるお客さんを
満足させる…。

顕在化されたニーズを
満足させることはできても

潜在的なニーズ… つまり

これから生まれるかもしれないニーズに
応えていくって

実は すごい難しいことで。

アマチュアって それが
しやすい立場だと思うんですよね。

自分がやりたいと思ったものを もう
面白いから やってしまう。

失敗するかもしれないけど 失敗したら
自分のかけたお金が無駄になるだけで。

でも それによって生み出されたら
それを…

アマチュア精神があったからこそ
できたんだと思いますね。

ああ~ すばらしい。

東京 お台場の…

2004年
科学未来館のプラネタリウム投影機に

実績のなかった大平の製品が選ばれた。

採用を決めたのは
当時 館長を務めていた

宇宙飛行士…

…と大抜てきを決めた。

2005年 自分の会社を設立。

大平のプラネタリウムは
全国各地の施設に導入され始めた。

その高い技術は 世界にも認められた。

アメリカやロシアなど 12か国で

多くの人たちが
大平が作る星を見上げている。

僕は そのね
星空が人の心に 何で こう…。

そして 見て 「うわ~!」って思うのって
何でだろうというのはね こう

ある意味 すごく根本的なというか
究極の疑問だと思ってるんですけど。

いろんな人と話をしてね

「何でだろうね? 何でだろうね?」って
言うわけですね。

例えば あの…

おいしい食べ物を見たら
食べたいと思うのとかって

これ 生存本能じゃないですか 人間のね。
当たり前のことですけど。

でも 何で…。

結構ね 時間と手間かけて
星空を部屋の中に映して見るなんて

ある意味
意味 分かんないじゃないですか。

でも その 意味 分かんないことを
人間がやるのって 何でだろうな? って

我ながら
自分のやってることを考えると…

…っていう気もして。

答えって 何かなっていうと

こんだけ たくさんの星があって
その中に僕らが この下で生きていて…

分かるような気がしますね。

何か 星空 見てると自分のちっぽけさに
すごい安心したりとか。

あと 星を見ると あの…

たぶん 人によっては
神様を そこに見たり

あるいは
亡くなった大事な人を見たりっていう。

…っていうのは
すごく きっと あると思うんですよね。

持ち運びができるコンパクトさも

大平のプラネタリウムの強み。

野外イベントでは 移動式の投影機が

1, 000万個の星を映し出した。

♬~

種子島では
海辺の巨大な洞窟を星空に。

♬~

東京 六本木の商業施設では
星のイルミネーション。

さらに
直径200mを超えるドーム球場の天井を

最新の技術で
世界最大規模のプラネタリウムに変えた。

1万人が 同時に星空を楽しんだ。

さまざまな場所に
星空を映し出すことの

一番大きな意味っていうか
いいところって

どんなことだと思われます?

僕は 今まで…

まあ 僕らが生きてる間 ずっとね
星や宇宙って

夢やロマンのある存在だっていう見方を
することが多かったと思うんですね。

でも 遠い昔は そうでなくて
生活に密着していて

もっと必要なものだったと
思うんですけども。

僕は これからの時代 もっと…
もっとっていうか 再びね…

自分たちや…

それを そこからヒントを もっと

もらわないといけないんじゃないかな
っていうふうに思います。

そのために いろんなとこ…

「いや 宇宙にあってね うちら…」

なるほどですね。

後半は 舞台をスイッチ。

♬~(演奏)

バイオリニスト 川井郁子。

幅広い音楽性と独自の世界観を持つ

日本を代表する音楽家の一人だ。

♬~(演奏)

去年 デビュー20年を迎えた川井。

それを記念して
ある特別な舞台を準備した。

バイオリンを演奏する音楽劇で

川井が演じるのは…

明智光秀の娘で
戦国時代の過酷な運命を生きた女性だ。

川井が選んだ対談場所は
ガラシャゆかりの美術館。

あっ こんにちは。
こんにちは。

先日は ありがとうございました。
こちらこそ ありがとうございました。

今日も よろしくお願いします。
よろしくお願いします。

何か こう
すてきな建物がある場所ですけど

ここは 何か特別な場所なんですか?
はい。

私にとっては とても特別な場所で。

私が…

ぜひ… ええ。
ここを… はい ご案内したくて。

細川ガラシャさんに すごく

心を惹かれてる
ということなんですけども

なぜ その細川さんに…
ガラシャさんに興味を持たれたのか。

私は 音楽… 音楽舞台を作るのが

一番大きいライフワークとして
取り組んでることなんですけど。

…って考えたときに
例えば 外国の女性だと

「エリザベート」とか 「エビータ」とか

実在の女性を こう 題材にした
ミュージカルやオペラありますけども

日本の女性は誰がいるかな?
って考えたら

こう 自分の意思がはっきり見えた

生き方を
自分で選択していった女性って

本当に こう 昔の歴史には数少なくて。

ガラシャが…

それが一番 今回 題材にしたいと思った
大きな理由ですね。

あとは 私が ふだん
音楽作りで好きな世界観の

和楽器との
コラボレーションをするにあたって…

…音楽舞台が作れるなっていうのも
大きな理由でした。

そもそも 川井が
バイオリンに出会ったのは6歳のころ。

ラジオから流れた
「ヴァイオリン協奏曲」に心を奪われた。

もう すごいやりたくて そのときから。

その… いろんな音楽を
たぶん 聴くと思うんですけど

なぜ バイリオンだったんですか?

何か すごいね
心が震えたんだと思いますね。

それで買ってもらったんですよね?

もう よく覚えてるんです 最初の対面。

クリスマスに サプライズで
持ってきてくれたんですよ 父が。

ええ…!
でも 本当に

長く憧れていたものだったから

ふたを開けたときの感動を
今でも覚えてます。

でも… そうは言っても

素人だと 演奏
全くできないわけじゃないですか。

その辺って どうだったんですか?

初めて弾くときとか 緊張とか…。

難しい楽器だっていう印象が
すごくあるので。

そうですね… 私が思うに
結構ね バイオリンって

最初の… ちゃんと
ある程度 弾けるようになる期間って

個人差があると思うんですね。
はい はい。

わりと 私はね
バイオリンとのマッチングが

最初 すごいよかったと思うんですね。

わりとね
すぐに曲が弾けるようになってて。

たぶん 頭で考えて やるようになると
すごい 時間かかると思うんですけど

自然に 何か こう 何ていうのかな…
何も考えずに やってると

ぱっと いけたりするじゃないですか
子どものときって。

理屈よりも先。 何か 早かったです…。

そこから先

だんだん プロに向かっていく階段って
あったと思うんですけども

まず その上達していく過程で

そうは言っても
「大変だな」って思ったりとか

「苦しい」って思ったことっていうのは
なかったですか?

この壁が
私にとっては つらかったんですけど

舞台恐怖症になっちゃったんですよ。
はい。

もう それね 中学の終わりぐらいから
高校生にかけて

もう 舞台で弾くことが
怖くて たまらなくて。

先生のお言葉で…

それで
「失敗してはいけない。

万が一… 真っ白になっちゃったら
どうしよう?」みたいな恐怖が

常に
つきまとうようになってしまって。

どんなに練習で弾けていても

何が起こるか分からないっていう
恐怖心が芽生えちゃって。

どういうふうにして
克服されたんですか?

それがね もう それまでは

練習を死ぬほどするしかないと
思ってたんですけど

あるとき 気付いたんですよね。 目線。

あのね やっぱり…

だから ずっと 自分の

動いてる手だったり
弓だったり いくと どんどん…

弾いてるっていう作業に
意識がいくんですね。

だから
緊張から離れられないんですけど

自分が弾いてる側じゃなくて

その音に こう 包まれてる人
っていう意識になれるのが…

ああ…。

その後 川井は…

クラシック音楽で
プロの音楽家への道を歩き始めた。

しかし 演奏活動を続ける中で
川井には ある葛藤が生まれる。

「川井郁子とは 何者なのか?」。

作曲家が大事。

だから あの… 何ていうの…

その演奏家が好きなように

こう 感情のままに弾く音楽じゃ
ないんですよね。

だから そういう名演奏家が

たくさん残ってる中で
弾くっていうのは

やっぱり 不安があるわけですよ。
ああ…。

…って何だろう?
って悩んでたんですね。

つまり クラシックって
同じように弾く…。

もう亡くなった演奏家でも
名演が いっぱい残ってる中で

自分っていう
バイオリニストがっていう。

ポップス系の仕事も頂いてたんだけど

でも これは ほかの人でも
同じようにできるよねっていう

何か こう… 自分じゃないと
できないものじゃないと

自信持てないっていうか。

そういう こう…
悩みの中にいたんですけど。

だから…

伝統的なタンゴに
クラシックやジャズの要素を取り入れ

新しいジャンルへ昇華させた音楽家だ。

♬~

聴いたときに
これまで聴いたことのないジャンル。

その 音楽の説得力と強さに
感動しちゃって…

それまでは
こう弾くべきと思っている音に

近づけるっていう
感じだったんですけど

そこからは もう 何ていうのかな…

要するに それまでは

音楽を弾くために自分がいる
っていう感じだったんですけど

もう そこからは
自分のために音楽があるっていうふうに

ある意味 真逆になったっていう感じ。

そして 2000年 川井は

デビューアルバム
「レッド・ヴァイオリン」を発表した。

情熱の赤。

10曲中6曲を みずから作曲。

クラシックの枠を超えた
アルバムとなった。

一番大きく ひょう変したのが

デビューアルバム出して
自分の音楽で舞台に立ったときですね。

それまでの発表会は もう

一番目立たないドレス

一番目立たない格好で弾くっていうのが
モットーだったんですけど

あのときにね
初めて こう 何ていうかな…

別人のような
女性のセンシュアルな こうね

赤いドレスで出たっていうことと…。

お客さんを全部
自分が引っ張っていってるような…

別の… 別のものが
生まれた感じだったんですね。

人の作った曲と
自分の作った曲っていうのは

やっぱり 全然違うのかなと
思ったんですけど どう…。

そこが すごく大きかったんですかね?
そこが… うん。

おっしゃるとおり 大きいですよね。
やっぱり 自分の作った曲って

自分の中から出た
自分の世界観なので…。

クラシックとして もう いわゆる

作曲家が言いたかったような
方向性で弾く場合は

ちょっとしたことでも
それは違うってなるわけですよ。

でも…

じゃあ そっちのほうが
それは まあ いいだろうみたいな。

そうですね。 そのほうが
思い切ったことができるっていうか。

♬~(演奏)

その後
さまざまな音楽的挑戦を続けてきた川井。

行き着いたのは
和の要素を掛け合わせた音楽。

♬~(演奏)

バイオリンと和楽器。

国と時代を超えた音楽を作り出している。

♬~(演奏)

和楽器と この洋楽器の
コラボレーション。

こういうチャレンジっていうのは
今までも あったものなんですか?

これ どちらかっていうと
下世話な質問なんですけども。

いや やったこと…
例えば 日本の曲を

バイオリンやピアノで弾くってことは
みんな されてるとは思うんですけど

実際に その… 新しく作るものに

原型がないっていうか
曲がないところで

コラボするっていうのは
なかったかもしれないですね。

私にとっては
もう 必然性のあるコラボなのでね

全然 実験っていう思いはなくて。

どうしても この音色は
和楽器でっていうのは

もう 自然に
浮かんだことなんですけど。

…っていうことを実感したので

より 深めていきたいなっていう
そういうコラボですね。

今 川井は

20年間の音楽活動の集大成となる舞台に
取り組んでいる。

今年12月公演予定の…

主人公は…

歴史に翻弄され
過酷な運命をたどった女性だ。

川井は バイオリンの演奏と演技で
ガラシャの生涯を表現する。

♬~(演奏)

細川ガラシャは 明智光秀の娘に生まれ

細川忠興に嫁いだことで知られる人物。

父・光秀が起こした…

その後 ガラシャは
「謀反人の娘」となり

厳しい幽閉生活を送った。

最後は 敵の人質になることを拒み

みずから死を決意する。

自害が禁じられるキリシタンだった
ガラシャは

家臣の手を借り その壮絶な人生を終えた。

今回の対談の舞台となった永青文庫。

細川家伝来の文化財を公開している。

川井は ここを何度も訪れ
ガラシャのイメージを膨らませてきた。

おお~…。

こちらの絵になります。

これは何ですか?
これはですね…

あっ これ 本物ですか?
本物です。
ええ~…!

そうなんです。

はい はい はい。 いますね。
もう 本当 生き生きとした…。

何か そこに すごく惹かれて。

もう 何よりも ガラシャが直筆で
こうして描いたもの…。

この… 何か うぐいすが こう…

自分自身の自由というかね

幽閉されていて かなり窮屈な思いを
長く されてたっていうのはね…。

だから
何か そういうのを投影したのか…。

ねえ…。 どんな思いで…。

でも とっても こう こまやかに…
勢いのある…

何ていうの… 筆遣いで描かれているので
生き生きとしててね。

宝物です。
すごい壮絶なね 人生を送られた方ですね。

ねえ…。
うん 最後ね。
そうです…。

今回 川井は この音楽劇をプロデュース。

総合演出も務めている。

物語の原作と構成。

舞台で奏でる音楽を作曲。

そして みずからバイオリンを演奏し
ガラシャを演じる。

華やかな衣装。

舞台装置やプロジェクションマッピング。

音楽劇を作り上げる すべての要素は
川井の発想から生まれた。

演出の経験が少ない川井にとって

今までにない大きな挑戦だった。

♬~(演奏)

何か こう… スクリーンに
何か いろいろ あるじゃないですか。

ビジュアルの演出まで
全部 見るわけでしょ。 はい。

それ… もう 自分の中から
どんどん出てくるんですか?

そうですね。 全部…

たぶん そのエキスパートも
私みたいな素人から言われるのは

なかなか ないだろうから
たぶん こう…

言葉が足りないと思うんですけど…

もう バイオリンを…
ご自身で 出演して 演奏されて

全体も組み立てるっていうのは
どうですか?

また 全然違う困難が
いろいろあると思うんですけども。

そうですね…。 いや でもね…

ガラシャは 何ていうか…

そのガラシャっていう人を借りて

バイオリンの特徴を
表現したい… すると

何か こう 何ていうかな…

コンサートでも 高まって弾くことは
いっぱいありますけど

やっぱり こう
どっか 我に返るっていうか

どこか 自分を保ってるところが
あるんですけど

人の役を借りることで
それさえ取っ払って

何ていうのかな
う~ん… 何ていうかな…

はいはい はいはい…。

すべてを超える感じっていうのはね
不思議ですね。

音楽劇の新曲の構想を練るため

川井が出かけたのは…

本能寺の変のあと

細川ガラシャが幽閉されていた
山深い場所。

川井は ここで ガラシャの孤独を感じた。

ガラシャさんが 2年間ね
夫の忠興から幽閉されていた山奥。

試練というか…

行ったときはね もう 本当
風が教えてくれる感じでしたね。

景色 変わってないじゃないですか。

で あの… 絶望感で あそこに
行ったんだと思うんですけど。

ああ~…。

どんな…?

きっと ガラシャは ここで
いろんな思いをね 空に向かってね…

語りかけただろうなっていう思いに
すごい とらわれて。

まあ それは 絶望もあっただろうし

本能寺のあと 亡くなったお父さんへの
思いだったりね

いろんな思いが この星空で…
対峙しただろうなっていうのを

実感できた気がしました。

何も変わってないですからね 自然は。

そして
川井が書き上げた曲…

♬~(演奏)

何か 今の僕から見ると

やりたいことをね 相当 もう
やられたように見えるんですけど

ここから先 もっと
やっていきたいことだとかというのは

どうですか?

何ていうのかな…

だから その…
ガラシャという人を借りて

音楽が持つ無限性とか
それを こう…

集大成の舞台を作りたいっていうのが
一番大きくて。

やっぱ オペラとかミュージカルとか

歌の世界には
そういう演劇 ありますよね。

だけど…

…っていうのが今の目標です。

お客様に…

…っていうのがあって。
そうですね。

ぜひね 何か そういうチャンスを
頂けたらなと。

今 ご自身で
自分の その表現っていうのは

加速してるっていう実感って
おありですか?

そう… そうですね。

…っていう感じと

あとは
やっぱり いろんな経験を積んで…

もう この年になって 確信が
やっと 持てるようになったから

自分の考えに従っていいんだっていう
確信は

一番大事ですよね ものを作るときに。

だから それで…

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