出典:EPGの番組情報
100分de名著 安部公房“砂の女”[新](1)「“流動”と“定着”のはざまで」[解][字]
舞台は海岸に近い砂丘の中に埋もれかかった一軒家。休暇を利用して新種のハンミョウを採取すべく昆虫採集に出かけた学校教師・仁木順平が直面した事件とは?
番組内容
砂地の集落にたどり着いた仁木順平は、女が一人で住む家に一夜の宿を借りることに。そこで繰り返されるのは砂を掻き出す単純労働。常に流動する「自由の象徴」と仁木が思い描いていた「砂」は、この場所では人間の自由を阻む壁として立ちはだかる。第1回では、「砂の女」の執筆背景などにも言及しながら、安部公房が描こうとした、人間がもたざるを得ない限りない自由への憧れと、それを阻害するものとの葛藤について考える。
出演者
【講師】漫画家…ヤマザキマリ,【司会】伊集院光,安部みちこ,【朗読】町田啓太,【語り】小口貴子ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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キーワード出現数ベスト20
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解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
砂丘を訪れた男が
アリ地獄に落ちた虫のように
砂の穴の中に とらわれてしまう
不条理な物語。
戦後文学の最高傑作の一つ
安部公房 「砂の女」。
穴の中で もがく 男の姿は
「自由」を求めることが
いかに困難であるかを
私たちに突きつけます。
安部公房が
「砂」に込めた意味とは。
現代の視点から 読み解きます。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
「100分de名著」
司会の安部みちこです。
伊集院 光です。
今月の名著は こちらです。
「砂の女」。
伊集院さん
読んだことはありますか?
僕 多分…
おお~。
読んだことないですね。
面白い本なんですが
これ 作家 安部公房の作品なんですね。
今から ちょうど60年前に出された
本なんですけども…
日本だけじゃなくて
世界中に ファンがいる本なんです。
では 指南役 ご紹介しましょう。
漫画家で文筆家の ヤマザキマリさんです。
よろしくお願いします。
お願いします!
よろしくお願いいたします。
ヤマザキマリさんは
代表作「テルマエ・ロマエ」をはじめ
これまでに
数多くの作品を発表してきました。
17歳の時に 「砂の女」と出会い
衝撃を受けたヤマザキさん。
以来 安部公房の作品に
魅了され続けています。
ヤマザキさんと この本の出会いは
イタリアに留学されていた時と
聞いてるんですけども。 はい。
当時 私17歳で
油絵を生業にしようと思って
出かけたのはいいものの
もう 家に帰ると
ガス 水道 電気が機能しない みたいな
極貧のね 真っただ中にいたような状況で。
イタリア人の作家の方たちとか
あと 画家の方たちとか
やっぱり貧乏の壁を乗り越えてきたような
人たちがいるところで
皆さん 私を見て
ばかにするわけですよね。
世の中のことも 日本のこともね
何も語れない。
一体 どんな絵を描きたいんだ こいつは
といって 大笑いしてた。
そうやって ばかにされて
落ち込んでいたら
その文壇のサロンの主宰者の
75歳ぐらいのね 作家なんですけど
お前 まず これ
ひとまず読みなさいと言って
持ってきたのが 「砂の女」だったんですよ。
イタリア語版の。
だから最初は イタリア語で読んで
これを とりあえず読むことによって
お前は その…
アリ地獄のようなね この…
読んでみるがいいよと言われて
それで出会いました。
まんまと その おじいさんの
言ってたことは はまるわけですね。
もう 読めば読むほどですね…
ものすごい強い影響力を
やっぱり 私に及ぼした。
もう この数分で
かなりドラマチックな出会いですけどね。
では まず 作家 安部公房の
生前のインタビュー映像などから
この「砂の女」が書かれた背景
見ていきましょう。
現代文学の世界的トップランナー
安部公房。
生前 ノーベル賞に
一番近い作家といわれていました。
1924年に 東京で生まれ
生後8か月で満州に渡り
16歳まで過ごします。
その後 東京大学医学部に進学。
しかし 医者の道には進まず
小説を書き始め
27歳の時…
その後も 「壁」や「砂」をモチーフに
不条理な社会に対する危機感を
ブラックユーモアを交えて
書き続けました。
1962年 38歳で「砂の女」を発表すると
海外でも
人気となります。
2年後 安部公房自身の脚本により映画化。
砂の穴に閉じ込められた男の心情を
見事に表現し…
注目を浴びました。
「砂の女」の初版本には
安部公房本人の言葉が記されています。
こう 言っていました。
この「二つの自由」の関係を追求したのが
この「砂の女」という作品だと
言っていましたけど。
どちらの自由というものも 実は そんなに
私たちが短絡的に解釈してるようなね
自由 イコール ひとつの解決策みたいに
捉えてるところがあるんだけども
ほんとに そういうものなのか
ということを まあ 問いかけている。
自由だよって
自由時間は走り回るもの みたいな
静かに 文章や絵をかくものっていう感じ
しないじゃないですか。
更には それを「砂」や「壁」をという。
「砂」にしても 「壁」にしてもね…
例えば…
自分の存在が見える。
ところが…
要するに 水みたいなものじゃないですか。
これ ここから読み解いていく時の
手がかりとして
砂は まあ基本的に自由ってこと?
この主人公は 少なくとも 砂は自由だと。
とらわれないものとしてあった。
壁は?
ところが 例えば…
安心じゃないですか。
うん。
だけど ぽんと
外に放り投げ出された時に
人って どうやって生きていくんだって
考えた時に…
果たして 私たちは…
…という問いを
多分 死ぬまで感じながら
生きていかなきゃいけない側面って
あると思うんですよね。
60年前は 壁とか砂とか
ややこしかったんだねって
話じゃなくて…
会社 家族。 家族なんていうのも
やっぱり しがらみじゃないですか。
日本には 世間体の拘束というのが
あるわけですよ。
うん。
空気を読むとか
何か 例えば LINEで既読をしてるのに
返事 返さないと はじかれたとか
もう 年がら年中
そういった壁ですよね ある種のね。
自由なくせに あるんですよ
そういうのって。
だから どの時代に 誰が読んでも
安部公房の文学というのは
とても基本的な…
それを彼は
ずっと追求し続けてきた作家なので
生きてる間に 一冊ぐらいは
安部公房の本を読むと
皆さん どっかで当てはまると
思うんですね。
では 物語に入っていきましょう。
そして 行方不明になった男は
民法第三十条によって
死亡の認定を受けたという結末が
あらかじめ 明かされています。
男に一体 何が起こったのか。
時は 7年前に遡ります。
主人公の男は 中学教師。
休暇を取り 趣味の昆虫採集のため
電車に乗り バスに乗り
更に 歩いて 砂丘へやって来ます。
しかし 男は そこで
奇妙な風景を目にします。
砂の穴の中に集落があり
家が くぼみに深く沈んでいたのです。
男は 砂地にすむニワハンミョウを
探し始めます。
彼は 新種の発見をもくろんでいました。
男は 昆虫が棲息する砂のことについても
詳しく調べていました。
更に 男は
砂の「流動」に対する
憧れのような感覚を
抱いていました。
主人公についてです。
初めは 名前が分からなくて
ただの「男」と記されています。
で 途中で
仁木順平という名前が明かされます。
で この男の職業は中学教師。
あ! っぽい。 すごい理屈っぽいし。 ねえ。
そして 休暇中に
ニワハンミョウの新種を探しに
砂丘にやって来たという設定です。
昆虫採集というところが
ポイントなんですけど
昆虫ってね やっぱり ちょっと
宇宙的なものなの 存在としては。
要するに…
昆虫と砂漠という組み合わせの
日本に 全然あるものなんだけれども
何か ちょっとSFっぽい。
地球的な やっぱり規模で
とにかく 安部公房さんは…
その出だしとしては
もう すばらしいですよね。
そして ちょっと
こちらをご覧頂きたいんですが。
この 仁木順平という男の
自己顕示欲ですね。 あと承認欲求ですね。
ああ!
自分が生まれてきたということを
どこかで 証しとして
残さなければいけない。
この 社会の部品として
捉えてほしいんじゃなくて
自分じゃなきゃ できないことを 自分は
やったんだということに対しての執着
こだわりがある人だということが
よく分かると思うんですね。
その読み解き方 すごいなと思うのは…
そうです。 そうです。
悪い意味でのインテリっぽさみたいなのが
あの辺に入ってるわけですね。
そうなんですよ。
で 更にですね
男は このように考えました。
「定着」という言葉に
ちょっと 着目して頂きたいのは
私たちは 定着して生きてますよね。
遊牧民じゃないんですよね。
定着というのは 農耕というものがね
人間によって 作り出されました。
そして…
そうして出来上がった社会。
でも その中では
社会のルールというのがあって。
ところが 砂というのは流動である。
流動は何かというと 遊牧民の方です。
誰にも しがらみを持たずして
自分で自由に その日 食べるものをとって
生きていけばいい。
だから どちらかといえば…
この いとわしい競争から逃れてね…
そうすると あの学校の先生というのが
効いてきますね 何かね。
だから そこで学校の先生やるところが
ずるいですよね。 甘え。 ああ~。
社会という壁に守られてね
きちんと お給料まで
もらえているにもかかわらず
どうも俺は
ここは 俺の居場所じゃないぞと。
ちょっと かっこ悪いなと
思ってるんですよ。
じゃあ こいつを インテリだよな
気取ってるよな では
切れないじゃないですか。
俺の中にも それ あるもん 間違いなく。
みんな ありますよ。
多分 これ読みながら 確実に 自分の砂
自分の壁 何か ズシッときそうですね。
ズシッとくると思いますよ。
さあ では 男は昆虫採集に夢中になるうち
アリ地獄へと足を踏み入れてしまいます。
ニワハンミョウに出会うこともなく
めぼしい昆虫の収獲もないまま
男は 大きな穴の底にある家を
のぞき込んでいました。
撮影しようと カメラを構えると
足元の砂が サラサラと流れ出し
穴に引きずり込まれそうになります。
男は ぞっとして足を引きました。
すると 耳元で せきこむ声がしました。
村の老人が 一人
すぐそばに立っていたのです。
老人は 男に話しかけてきました。
男が昆虫採集をしていることを伝えると
老人は こう言います。
老人に連れていかれた家は
砂の穴の中にありました。
ほとんど垂直の砂の崖を
縄ばしごを使って 男は降りていきます。
到着すると
三十前後の いかにも人が好さそうな
小柄な女が出迎えてくれました。
家は 今にも崩れそうな あばら家。
ふすまの代わりに ムシロがかかり
柱は ゆがみ
畳は ほとんど腐る一歩手前の状態でした。
男は 自分に言い聞かせます。
女が食事を振る舞うと
食べ始めた男の頭の上に
女は 番傘を差しかけました。
男が驚くと
砂が降ってくるからだといいます。
更に 掃除をしなければ
砂は 梁まで ぶよぶよに腐らせ
砂自体も腐ってしまうというのです。
2人の会話は かみ合わず
女は返事をしません。
その後 布団を敷きながら
夫と中学生の娘が
崩れてきた砂に埋もれて
死んでしまったことを語ります。
やがて 村の合図とともに
女は家の外へ出て
「砂掻き」を始めました。
毎晩 その労働をしなければ
家が砂に埋もれてしまうというのです。
男は 手伝いを申し出ました。
しかし 際限のない不毛な労働に
嫌気がさした男は…。
スコップを途中で放り出し
部屋に引き返すと
男は 眠りにつきます。
女は 砂を掻き続けていました。
ちょっと あの声かけてきたお年寄りとの
やり取り 見てみましょうか。
仁木順平の 都会から お金に困らない
状況でやって来てる人の好奇心。
この田舎の暮らしというのは
なかなか特異で 面白いなと
どこか こう やっぱり
相手を見下してるかのような。
帰ってこれるからこそ
一旦 ちょっと見て おおって…
どこか 侮ってる感じが
否めないですよね。
僕 ラジオで それを しゃべって
全然 悪気なかったんだけど
お叱り 受けたことがあるのが
地方が チェーン店の進出で
景色が変わんなくなってるのが
旅好きの僕としては つまんないっていう
言い方をして。
で そうすると
やっぱり 地方の人からしてみたら
便利になるなってことなの?
っていう。
地方の不便さを
たまに来て 楽しむ立場に
俺は どうやら彼と全く一緒。
めちゃめちゃ傲慢な。
完全に同じことですよね。
で そのあと 男と女の砂に対する解釈が
かみ合わないってありましたけど
男は どう言ったか まず見ると…。
女は…
…というふうに言って
だいぶ捉え方 違いますよね?
だから
仁木順平にとっての 砂というのは
何か すごい
ロマンチックなものなんですよね。
自由の象徴みたいなものなわけですよ。
腐敗させるなんていうことは
あってはいけない。
風通しのいい
サラサラしたものであるべきなんです。
ところが その女は そうじゃないよと。
俺 もう 自分の中の仁木が
めちゃめちゃ思い出で 出てくるわ。
雪国ロケ 行って
でいて ものすごい雪を見るの
テンション上がるんですよ
見たことないから。 ああ~。
「この辺の子
雪合戦とかしないんですね」って言って
地元の人に
「人 死ぬしね」って言われて。
うわ すごいわ。
ああ~。
そのあと またちょっと
レジャー感覚 出るじゃないですか。
砂掻き 手伝いましょうか みたいなやつ。
砂掻き 砂掻き。
そうそうそうそう レジャーです。
で 男は その時 こう言っていました。
一旦 やるっつったんだよね。
それも 俺たちの雪かきと似てるんだよね。
やっぱ
雪かき ちょっと やってみたいと思うの。
ほんとに 雪国の人 ごめんなさい
ちょっとだけ やってみたいと思うのよ。
でも多分 やってすぐ これじゃ もう
雪かきで終わっちゃうよ! ってなる。
せっかく 自分の…
ところが そんな中で 一生懸命…
まるで 砂というね
彼が後ろに置いてきた社会のような
壁のような状況で生きてるわけですよ
この女の人が。
だから それ見てると許されない。
ありえないわけですよ
仁木順平的には こんなのは。
で イライライライラ
してきてるんですよね。
女というのは
ひょうひょうとね…
実直に…
男っていうのは…
まあ 脆弱な存在であるということを
その女を前にして
感じそうになっちゃう。
それを阻止するのに必死ですよね。
でも 何か すごくよく分かるんだよな。
そうなんです。
高校をやめた時も
やめなかった連中のことを認めたら
俺 終わっちゃうと思うんですよ
そのころ。 分かる 分かる。
そうすると 「大学 行ったってさ」って
言いたくなるんだよね。
今 この年になって
諦めと いろんなもんが混じったもので
余裕 持って 言えるじゃないですか。
でも あのころは もう認めたら
俺が なくなっちゃうと思うから。 そう!
今の彼みたいに 必死になって 俺の人生が
正しいって思い込もうとしてた気がする。
いや 何か分かりますね~。
さあ アリ地獄に はまった男
このあと どうなるのでしょうか。
次回 更に
物語を進めていきたいと思います。
ヤマザキさん ありがとうございました。
はい ありがとうございました。
ありがとうございました。
♬~
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